よく外国語はリスニングはできるが、話すのが苦手という人がいます。
アメリカなどでも、親や祖父母が外国からの移民で、家で祖国の言葉(heritage language)を話している2世や3世の人は、彼らの話している言葉はわかるが、自分ではその言葉を話せないし、書けないという事があります。
この能力をpassive abilityというらしい。身に付けたスキルというよりは、自然に身についた能力というわけです。
僕が英語のリスニング能力習得で苦労していた時、リスニングから入っていく人が羨ましく、その構造が理解できませんでした。
そもそも人間は、自分の話は聞いてもらいたいが、人の話などは、有益な情報以外、基本的にまったく興味がないと思っていたからです。
昔から先生に人の話を聞けと怒られ続けていた僕には当然でした。
このタイプの僕にとって、リスニングは最後まで課題でした。
語彙を学んでも、ネイティブの言っていることが全くわからないんです。
留学を実現するために、TOEICやTOEFLのリスニング問題はパターンを暗記することで、高得点を出すことができたが、根本は全く解決しませんでした。
現実世界のアメリカ人やイギリス人は、アナウンサーでもゆっくりはっきり喋ってくれないし、使うボキャブラリーも遥かに豊富です。
それでもアメリカで3年も暮らしてどうにかコツを掴みました。でも、イギリス映画なんかを観に行くと、ブリティッシュアクセントが飛びだし、積み上げた自信が崩壊。
そして自分に対する無力感と怒りに居た堪れなくなり、自信喪失して落ち込む。その繰り返しでした。
でも、同じ留学生でアメリカ生活は短くても、彼らは僕のような苦労をせずリスニングがどんどん上達していきました。
自信喪失はますます深まり、俺はバカなんじゃないかと思っていました。
所詮遺伝子の壁は越えられない、バカに生まれた俺は、永久にモノリンガルの域を脱するのことはないのではないかと。
しかし、ある日本屋で買ったCD付きの本を読んでいてピンと来ました。
リスニングは出来ない人は発音が悪い。
そういえば渡米前に、アメリカ留学を体験していた友達からこう言われたことがありました。
「あなたがリスニングが下手なのは発音が悪いからだよ」
英語の音を理解していない人は、脳が日本語の音を識別する準備しか出来てないからダメなのだ、というのです。
挫折を知る前の傲慢な僕は、俺は発音もリスニングも完璧だ、お前は何言ってるんだと鼻で笑っていました。
よく駐在10年とかのおじさんが、英語がペラペラでも、発音がカタカナ鈍りの人がいます。
僕が会った事がある国際的な有名人では、ショー・コスギ(ケイン・コスギの父)がその典型例でした。
彼の英語は全部カタカナに聞こえていました。「イエス・ザッツ・ライト!」と言った感じに。
発音を矯正した訳ではないのに現地の言葉が理解でき、自然にコミュニケーションできる、こういうスキルは恐らく、並外れたアメリカで成功する執念と努力が習得させか、あるいは語学の才能があるかのどちらかでしょう。
当時の僕には、アメリカ人と友達になってやるという執念はあったが、そういう才能や脳の柔軟性がなかったようです。
今思えば、アメリカ人や文化にさほど興味もありませんでした。ただ興味があったのは自分の成長だけでした。
だから心を改め、それから発音を学びはじめたのです。
それから、アメリカ人の僕に対する評価が大きく変わりました。
まず、僕が言った事が正しく伝わる。わかり易いと褒められる。
そして、リスニング力も、発音力のアップに比例して伸びていきました。
よく、一定の年齢(いわゆる臨界期 threshold)を過ぎた人が英語の発音を直そうとしても、アクセントは一生消えないと言われますね。
果たしてそうなのだでしょうか?
僕の出した結論は、年齢に関係なく、限りなくネイティブに近い発音をする事は理論上可能だと言う事です。
ネイティブ発音のメカニズムを理解し、真似すればいいのです。
ただし、発音は癖なので、油断をすればまたすぐ元の日本語発音に戻ってしまいます。マスターしたことはないですが、多分ゴルフのスウィングや楽器の演奏と似ているのだと思います。
とにかく、発音をどうやって習得したか、それをお金を出して時間を掛け、アメリカ留学して、大学で言語学(linguistics)や音声学(phonetics)の勉強をして得た知識を、ここで分かりやすく簡単に書いていこうと思っています。
- 英語はリスニングが苦手な人がいる
- それでも克服することは可能
- リスニングが下手な人は発音も下手