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生活必需品を売るチェーン店では、会員ポイント制、ディスカウント祭りは逆効果?

モバイル・マーケティングが流行る前から、ゲーミフィケーション(ゲーム化)という手法はありました。

例えば、ポイント制。

あるお店の商品を購入したりサービスを利用するごとにポイントが貯まり、ディスカウントを受けられたり、オリジナルの販促品と交換出来たり。

日本でも幅広く取り入れられている手法ですが、本当にプラスになっているのか疑問に思ったことはないでしょうか。

近所のディスカウント・ゲーム好きの薬屋さん

僕がいつも利用している近所の薬局のチェーン店は、アプリにクーポンの情報が定期的に入って来て、店頭でバーコードをスキャンすると5%とか10%オフになります。

それとは別に、店頭でもらう紙に印刷された広告のクーポン券を切り抜くと、アプリとは別の商品にディスカウントが受けられます。

このチェーン店は、全店共通のポイントも管理しています。

レジで買い物をする際、クーポンの提示がないと、スタッフからポイント・カードの提示やクーポンの所有の確認を求められます。

そしてこの携帯アプリ、結構不具合が発生し、毎回ログインできなくなります。店員さんに調べてもらっても原因を解明することができず、今は毎回電話番号でポイント管理してもらっています。

顧客にマニュアル通りの確認をし、アプリ開けさせてスキャンしたり、ポイント管理をしたりする業務が、従業員に大きな負担を与えているのが一目瞭然です。

一消費者の意見になりますが、どうせディスカウントするなら最初から値段を下げ、こういうったマッチポンプに要する従業員の作業を減らせば、顧客も早く安く買い物を済ませられるので嬉しいし、お店も人件費が大幅に浮くのに、と思います。

僕がこのチェーン店を利用する理由は、正直言ってクーポンや価格というよりは(価格においては、競合と目立った大差はありません)、品揃えや、都内にありながら比較的広い駐車場があるからです。

そこで今回は、「ゲーミフィケーション」という手法が本当に効果的かという事を2018年に研究したスウェーデンの大学の論文を元に検証してみます。

ゲーミフィケーションとは

ゲーミフィケーションとは、消費者に対して販売を促すために、何らかのゲーム要素を取り入れたマーケティング手法です。

こういったゲームには、クイズを出して正解するとディスカウントをもらえたり、ポイントがもらえたり、顧客のランクがアップしたり(シルバーからゴールド、ゴールドからプラチナなど)、ユーザーのコミュニティで紹介されたり、などが含まれます。

先に述べたスウェーデンの研究の結論から先に言うと、ゲーミフィケーションはいつも販促に効果があるとは限らず、顧客はすでに商品に興味を持っているなどの限られた条件においてのみ有効であるという事がわかっています。

スウェーデンの実験内容

この研究では、スウェーデンのスーパーマーケットと提携し、店内にいる買い物客の現在位置と広告の効果の関連性を調べるため、GPSを使って、買い物をする際に顧客が携帯しているデバイス(主にスマホ)にスーパーの店内で売っている商品の広告を出し、宣伝された商品に注目をしたか、購入意欲に影響があったかを顧客に事後アンケートして結果を統計しました。

また、別の研究では、スーパーの買い物客に「回り道」させた方が(つまり、最初から目的の商品にまっすぐ到着させのではなく、意図的に道に迷わせた方が)、売上がアップすることがわかっていたので、それも考慮に入れまて顧客誘導を試みました。

ちなみに、どこの国であっても、一般に広告宣伝を行う際には、こういった人間の習性は常に考慮されています。

例えば、広告製品をわざと遠くに配置し、そこからレジに到達する前に他の商品に触れさせることで販売を促しています(Högberg, 2018)。

この研究で使われたアラートの内容は、買い物客のスマホに広告と同時に商品にちなんだクイズ問題を送って回答させ、正解すると特定の商品に25%ディスカウトを与える、というゲームでした。

また被験者全員に、参加の報酬が与えられました。

結果

結果は上記の通り、ゲーム形式の広告を出した場合と出さない場合とで、購買意欲にポジティブな影響はみられず、場合によってはむしろネガティブな影響が出て来ました。

ただし、すでに商品に興味を持っている顧客がこういったゲーム形式の広告に触れた場合、購買意欲に対するネガティブな影響が「薄まった」という結果でした(Högberg, 2018)。

原因分析

今回実験の結果、「ゲームが販売を促進する」という仮説が実証されなかった原因として考えられるのは、スーパーで食品を買う行為は、そもそもストレスの多い作業であり、そこにクイズなどという不要な作業を片付けないと「損をする」気分になり、かえってストレスが増えるという事です。

冒頭で書いた薬局のパターンと同じです。消費者は、ディスカウントをするお店はあらかじめディスカウントの分を計算にて価格設定をしていると思っているので、ディスカウントを受けられないと逆に「損をした」と感じる場合の方が多いようです。

従って、「どうせディスカウントするなら、最初から面倒くさいことしないでディスカウントしてくれればいいのに」と考える消費者が一定数現れます。

それどころか、このゲームをキャンペーン化する事が、クーポン券の印刷代も従業員の人件費も手間もかかり、アプリからクーポンを探して表示する顧客の時間も無駄になり、win-winならぬlose-loseの状態に陥ることがしばしばあります(Högberg, 2018)。

結論

上記の理由により、このスウェーデンの実験の結果を見る限り、生活必需品の買い物の際は、場合によってはディスカウントのためのゲーミフィケーションはかえって逆効果となる、という事がわかります。

逆に、ポイントからオリジナル商品に交換できるプログラムは(それがいいものであれば)、顧客はポジティブは感情を持つでしょう。

〇〇薬局さん、本当にそれ、「差別化」として効果的でしょうか?ご検討いただけましたら幸いです。

Reference

Högberg, J.; Shams, P.; Wästlund, E. 2018. Gamified in-store mobile marketing: The mixed effect of gamified point-of-purchase advertising. Journal of Retailing and Consumer Services, 50 (2019), pp 298-304

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