日本の市場は縮小傾向にあります。
そして、中国やインドの市場が世界全体の市場の多くを独占しつつあります。
今回は、中国のフード産業のモバイル・プラットフォームへの移行を示す論文についてまとめました。
日本国内における、日本人とアジア人による仕事の奪い合いついては、こちらから。
目次
アジアのモバイル普及の背景
また、モバイル(スマホ)の市場は、この2国で以上なまでの伸びを見せています。
2国の人口は世界人口の3分の1に及び、Global Association of Mobile Operations (GSMA)の発表によれば、2017年の時点で世界に50億人のモバイル・ユーザーが存在し、欧州の全人口の86%がモバイルを所有、アメリカの2億9200万人のユーザーに対し、アジアではなんと27億6500万人がモバイルを持って生活しています(Cho et al., 2018)。
特に、中国一国で10億を超える人口がモバイル・ユーザーであり、アジアにはまだまだ伸び代があります。
ただ、「アジア=東洋」という地域区分が西洋=欧米目線の話で、そこには日本・中国・韓国といった東アジアの他、インドや中近東も含まれるので、そもそも何を持って「アジア」と呼ぶかの問題であり、要は、中国とインドを中心に、これらの国々でのモバイル人口が爆発的に伸びているということになります。
しかし、残念ながら、日本のIT系の企業は、こんな巨大市場の中にいながら、日本市場のみをターゲットとした企業がほとんどで、LINEや楽天のような大きな企業であっても主要市場は日本で、その他の地域では、メッセンジャー・アプリの市場では、LINEはFacebook Messenger、WhatsAppやWeChatは日本国内でしか普及しておらず、ECサイトにおいては、楽天は海外市場においてAmaon、Alibabaなどに勝てていません(Cho et al., 2018)。
中国市場は1国だけで日本の10倍もの人口を誇り、ITにおいて閉鎖された特殊市場なので仕方がないと思いますが、経済市場は戦争と同じで、ルールはありません。
アジア市場での大きな変化の一つに、フード産業でのアプリの普及があります。
日本でも、Uberはタクシーの代替になっていないのに対し、Uber Eatsはフード産業の新しい変化をもたらしています。
特にコロナの影響で外に出る人が少なくなり、デリバリーの需要が成長したように思います。
巨大な中国でもこのトレンドが顕著です。
特に、これまでの1世帯に複数が同居する生活するスタイルから、一人暮らしの世帯が増えました。
この原因には、高齢化や核家族化、出生率の低下、若者が上京して就職するパターン、独身者の増加などがあげられます。
この状況にも、日本との共通点が多くみられます。
アジアだけでなく、アメリカ、特にカリフォルニア州ロサンゼルスでフード・デリバリーのアプリの活用が増加しており、LAのレストラン業界関係者は、追加設備投資を必要としない新しい商売チャンネルを「ゴースト・キッチン」と呼んでいます。
この比較的若い(20代〜30代)一人暮らしのセグメントは、フード・デリバリー産業の主要な顧客層を形成し、ここへ売り込む事が市場競争を勝ち抜く重要な鍵になっています。
中国ではすでにフード産業の群雄割拠の時代に突入しており、饿了么(Ele.me)、美团(Meituan)、百度外卖(Baidu Waimai)などは鎬を削る戦いを展開しています。
アプリの使いやすさと消費者のイメージを研究
2018年のあるアメリカ、中国、韓国の大学の共同研究で、フードデリバリー用アプリの①利便性・使いやすさ、②デザイン、③信頼性、④価格、⑤品揃えの豊富さと、「消費者が感じるアプリの価値の高さの相関性」が調べられました。
また、この消費者が認めるアプリの価値と、購買意欲及び継続してアプリを使用する行動を示す、「リピート率」との相関性もテストされました。
さらに、これらの関連性が、「一人暮らし世帯と複数が同居する世帯でどう違うのか」も調査されました。
研究結果
結果は、一人暮らし世帯とそうでない世帯では、統計学的に明確な違いがある事がわかりました(Cho et al., 2018)。
基本的にどちらの世帯区分も、①〜⑤のいずれもアプリの価値認知と相関性がありましたが、一人暮らしの世帯は、特に③信頼性、④価格、⑤品揃えの豊富さ、が重要で、アプリの価値や継続利用行動に直結しており、二人以上の世帯は①利便性・使いやすさ、②デザイン、③信頼性、との相関性が強く出ました。
特筆すべきは、共通して強い相関がみられたのは④価格ではなく、③の信頼性であった事です。
非常に重要な信頼性を高めるには、飲食店の信頼と、アプリの信頼性の両方が必要です。
アプリの信頼性を高めるには、アプリの情報を毎日アップデートして、嘘の情報をアプリから配信しないように徹底する事などが必要となります(Cho et al., 2018)。
日本ではまだまだ不便な事がある
この間、店頭のディスプレイに飾られた模型の蕎麦を見て、蕎麦が食べたくなって蕎麦屋に入ったら、「すみません、蕎麦はもうないんですよ」と言われた事がありました。
オンラインのデリバリーにおいては、こんな事は許されません。
注文の間違いや、到着の遅れなども、ネガティブな印象を与えます。顧客が望む決済方法が使えないというのも、フードデリバリーにおいては大きな損害になります。
この研究は、中国の広州で行われた研究なのですが、日本では中国に比べ遅れ気味とはいえ、今後後を追うように似たようなトレンドが出てくるでしょう。
こういった研究の結果は参考になるはずです。
References
Cho, M.; Bonn, M. A.; Li, J. (2018). Differences in perceptions about food delivery apps between single-person and multi-person households. International Journal of Hospitality Management. 77 (2019). pp108-116.
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