アマゾンなど、積極的にオンラインでのマーケティングに乗り出している会社では、SNSをモニタリングする部門が存在し、消費者の動向を常時調べています。
イギリス・ブリストル大学が2017年に発表した論文の研究によると、SNSユーザーがあるブランドに対して持つポジティブがネガティブかの感情は、消費者がSNS上でそのブランドに与える影響といくつかの要素によって関わっています。
研究の概要
この研究では、ロンドン株式市場に上場しているアマゾン、 Tsco、Argos、John Lewis、Asdaの5社に絞り、ツイッターでメンション、つまりブランド名に言及のあった書き込みがNodeXL(version 1.0.1.362)で集計され、その中から英語のツイートのみが抽出され、分析されました。
まず、研究者は「ポジティブ」および「ネガティブ」なキーワードをいくつか定義し、それらのキーワードの有無を使ったスコアリングによって、各ツイートが「ポジティブ」か「ネガティブ」かに分けられました。
ポジティブなキーワードをより多く含むツイートは「ポジティブ・ツイート」、その逆は「ネガティブ・ツイート」としてカウントされ、どちらのキーワードも含まれていない場合、あるいは「ポジティブ」と「ネガティブ」のキーワード数が相殺してその差がプラスマイナスゼロの場合は、「ニュートラル(中立の)ツイート」としてカウントされます。
この研究は、ある期間にツイートされたもの7万6166ツイートを対象としました。
研究の結果
その結果、全体として、は「ポジティブ」が12%、「ネガティブ」が8%、「ニュートラル」が80%でした。基本的には8割が、ポジティブでもネガティブでもないツイートで、ネガティブよりポジティブがやや多めという感じです。
ネガティブなツイートは、多くの場合、いわゆる「炎上」が発生した場合にクラスター状に連続で発生し、ユーザーの感情の高まりと共にヒートアップし、感情の静まりとともにフェードアウトするという相関関係にあります。
炎上が発生した場合、冒頭で書いたSNSをモニタリングするする部門が火消しに入ります。
例えばアマゾンは、これに該当する部門が管理する@amazonhelpという第2のツイッター・アカウントが存在し、この役割を担います。
古くからの日本の諺で「人の噂も75日」と言いますが、多くの場合、ネガティブな感情は時間と共に治まります。
しかし、「炎上」したときにカスタマーサポート担当者が真摯に事態に対応したかどうかで、ネガティブな感情の静まり具合に大きな影響が見られました。
特に、エンゲージメントの高い(SNSを長く見ている)消費者ほど、つまり強いネガティブな感情を抱いたお客さんであればあるほど、その効果は大きくなりました。
例えば、一時的にネガティブなツイートが全体の12%を超えるような状況があった場合も、その後の企業の対応で2%程度まで落ち着いていました。そうでなければ、ネガティブな発言がその後も8%程度残る場合が見られました。その差は6%です。
余談ですが、日本でも、ユーチューバーや有名人の発言が炎上を引き起こしたとき、逆ギレ的な発言で対応したために、炎上の炎に油を注ぐ結果となり、まるで地獄絵図になる事もよくあります。
あれはまさに逆の効果を裏付ける事例と言って良いでしょう。
研究から導き出されたこと
これらの研究結果から、論文の著者は、ある程度知名度を築いた会社は社内に問題をスマートに対応するプロの部門を設置し、SNSでの消費者の動向をモニタリングし、消費者がネガティブな感情を抱いている場合は、うまくそれを聞き出し対応する事でオーディエンスの怒りを鎮める方法を採用する事を強く推奨しています。
もはやSNSでのブランドの評価は、企業にとって生命線です。
日本でもすでに、業界や事業規模によってはこの方法を採用し、SNS専門部署を設置している企業もあると思います。
でも、僕が仕事でインドに行った時は、訪問した企業すべて、社会にSNS部門を設置するか、その業務を外注するかで、必ずSNS担当業務を回していました。これは、ビジネス形態がB2Cだけではなく、B2Bであっても同様でした。
中国もオンラインの商売にかなり力を入れているし、もうきっとそういう時代が来ているんだと思います。
References
Ibrahim, N. F., Wang, X., & Bourne, H. (2017). Exploring the effect of user engagement in online brand communities: Evidence from Twitter. Computers in Human Behavior, University of Bristol. 72, pp.321-338