1990年代前半のバブルの頃まで、日本はアメリカに迫る勢いの経済力を誇っていました。その頃僕は子供だったけれど、世界のトップ10社のうち半分くらいが、日本のインフラ系、金融系、そして製造系企業に占められていたのを憶えています。
ああ、自分は、アメリカには勝てないけど、その次にすごい国に生まれたんだな、と思ったものです。
ただ、自分の国に誇りを持つ一方で、頭にネクタイを鉢巻のように巻き、酔っ払って人目も憚らずバンザイするおっさんたちを見ながら、こんな国のどこが凄いのか疑問だったのも事実です。
そして、バブルが崩壊して以来、日本は衰退の一途をたどっています。日本の企業は、世界のランキングから姿を消し、ひとりあたりの収入は、世界のトップクラスどころかアジアでもシンガポールや香港に遠く及ばなくなっています。
東南アジアに海外旅行に行っても、ベトナムのホーチミン市の物価も、日本とあまり変わりません。
中国などを見ていると、その成長スピードと意欲はすごいものがあります。国レベルにおいても、個人レベルにおいても、その勢いは脅威でしかありません。
そして、東京は最近物価ばかり高くなって、企業は従業員に払う給料を増やすことをせず、国民払うの税金はどんどん重くなり、将来この国を守ってくれるのか、と不安になります。
長い間、「日本は平和ボケで迫り来る危機に気づいていない」などと言われていましたが、そろそろここに来てその危機がゆっくりと形を見せているようです。
日本人の多くも、その危険さに気づいて来ました。
というわけで、まずは最初のWhy分析からしてみたいと思います。
日本の経済は衰退している。
Why 1: 日本企業が日本人にいい給料を払わない。
企業は利益を出しているのか。出している企業もあるが、生産性が低いのは間違い無いでしょう。
でなければ、日経株価平均がこんなに低いはずがありません。
アメリカや欧州のインデックスは長期的には少しずつ成長しているのに、日本だけは成長しません。
老害や年功序列、能力よりも社歴を重視し、実績が伴わなくてもクビにならず、同期はみんな同じ給料。
だから能力のある人間は海外に行ってしまう。もちろん、語学力と好奇心とパワーがあることが前提です。
日本企業が日本人にいい給料を払わない。
Why 2: 利益を上げていないから、給料が払えない。
そもそも、日本経済の衰退は、企業のパワーが弱まったのが原因だと思われます。
もともと世界の需要にマッチしたイノベーション力に乏しい日本は、既存のシステムを改良し、効率で品質が高くリーズナブルな価格の製品を作る力に頼ってきましたが、80年代以降のアメリカに、トヨタをはじめとする当時世界トップレベルに優秀だった日本企業の効率的な生産のメカニズムを徹底的に分析され、もはや日本だけ強みではなくなりました。
中国や東南アジアの製造業の工場を覗くと、ハーバードやMIT、スタンフォードなどで教育を受けた少数のエリートが、大勢の給料の非常に低いオペレータを統率して非常に合理的な仕事をしています。
利益を上げていないから、給料が払えない。
Why 3: 世界に通用する日本企業がない。
日本企業の多くは、ターゲットは日本市場前提で戦略を立てています。
「海外事業部」などという”特殊”部署がある一部上場企業は、日本ならではのものでしょう。
そもそも僕がこれまで見てきた海外の企業は、最初から世界全体をターゲットとしていますので、「国内事業」「海外事業」などという区別はありませでした。
私が見る限り、日本企業のように、英語が使えないのに中間管理職についている人も少ないです。
いくら優秀な方でも、海外とビジネスする際は、「仕事のスキル」x「言語力」=「仕事力」になってしまうので、イノベーティブな商品やコンテンツを作れない本企業は、日本国内の狭まる市場で勝負するしかありません。
世界に通用する日本企業がない
Why 4: 海外を特別扱いしてる。というか海外に興味がない。
海外に興味がなくても済んでしまうのが日本の特徴です。
この間、IT関連の展示会を訪問するために東京ビッグサイトに行ったら、日本の先端技術を持つ多くのIT企業がブースを出していました。
多くの経営陣が、まだ20代か30代で、自信に満ち溢れていました。中には、正直、明らかに僕より年下なのに、少し上から目線で不自然に感じた人もいました。
でも、共通していたのが、みんな国内市場のみをターゲットとすることを前提にしていたことです。
それに比べて、同じく展示ブースを出していたオフショアのベトナム人のプログラマーの人たちは、とても謙虚で日本語も流暢で、非常に頭もよく、価格も日本人の半分くらいでやってくれます(逆に日本での市場需要の理解は日本人ほどではないと思いますが)。
理屈で考えれば、絶対に彼らに仕事を頼んだ方がコストパフォーマンスはいいのに、それでも日本のITベンチャーの方が日本企業の需要があるのは、やはり日本語を話す安心と安全、親近感、そういったものではないかと思いました。
申し訳ないですが、上記の上から目線の方々は、正直もう少し謙虚に礼儀正しくなった方がいいと思います。
でないと、遠くない将来、日本国内にも、IT業界に限らず仕事全般において、海外からの脅威が台頭してくるでしょう。
世界に通用する日本企業がない
Why 5: 英語力がないので情報受信発信ができない。
コミュニケーションや思考の元となるのは、やはり言語です。
新しい言語を学ぶことは、新しい世界観を形成することでもあります。
日本にも英語が使える人はたくさんいます。でも、日本語と英語を同じレベルで使えている日本人それほど多くはありません。
現代はインターネットお陰で情報が溢れていますが、日本語で入手できる情報は、英語で入手できる情報と比べ、はるかに少なく、翻訳されるのは厳選されたもので、そのタイムラグもあるため、質も量もタイムリー性の大幅に劣ります。
情報の豊富さで言ったら、5倍や10倍どころではありません。
英語圏の有名大学や企業には、世界中から優秀なブレーンが集まり、共通言語である英語で情報を共有し、進化を繰り返している状態です。
日本人のように、いくら東大の優秀な人も、日本語の使える日本人ばかりのコミュニティの中で勉強していたら、外も世界とは乖離ができて当然です。
Google Scholarなどで論文を検索しても、日本人が発表している数は、海外のそれに比べて遥かに少ないのも確かです。
でも、英語が使えない日本人に限って、「英語など重要ではない」という。
使えないことによる損失は「機会損失」であり、機会損失は、体感されないために認識されません。
実際、超有名なユーチューバーでIT長者と呼ばれる人、論破王と呼ばれる人も、あの日本語での雄弁さをそのまま英語で再現できるかというと、さすがにそれはできず、今のところはすでに知名度のある日本での仕事に集中した方が効率が良いから、日本市場を中心に活動を続けているのだと思います。
彼らのあの能力が英語圏でも同じレベルで活かせたら、絶対にもっと活躍できるでしょう。
元マッキンゼーで英語で出版されている大前研一氏は、英語力を生かしてビジネスで大成した例だと言えますが、その出版物の内容は、当時欧米から注目されていた日本企業に焦点を当てており、日本人でありビジネスのエキスパートであったという時代背景が味方についていた事も事実です。
というわけで、僕の勝手な分析によると、「日本経済の衰退」の根本原因は、「日本人の英語力の不足」となります。
まさにこれが、僕が20年前に渡米を決めた理由でもあります。
会社設立に必要な書類を無料作成 マネーフォワード 会社設立では、日本はこの状況から脱却できるのか?
結論、日本はもっと落ちるところまで落ちないと無理だと思います。あのおじいさんたちが政治を牛耳っているうちは。
ただ、個人の人生は今日から変えられる。今日から英語を習得し、日本語だけでなく英語のコンテンツからも情報を吸収し、世界を相手に仕事をすればいい。
それは個人のモチベーション次第です。
AI翻訳が人間の脳に取って替わるから、英語学習は投資対効果が低いという人がいるけど、それは違うとおもいます。実際は、英語に投資する時間と労力ほどリターン率の高いものは少ないと思う。
確かにかなり便利なツールは開発されています。今後、もっと精度の高いAI翻訳のアプリが出てくるでしょう。そこには、ITの技術者や、言語学者の努力があるのだと思います。
しかし、AIには、まだ心を持つことはできていません。
言語は意思疎通のツールであるとともに、個人のアイデンティティーであり、文化での一部です。
つまり言語を習得することは、自分の中の常識を壊し、新しい世界を心の中に創り上げるということだからです。
人生が豊かになり、人間としても大きくトランスフォームできるはずです。
これは、やり続けたら、きっとわかります。