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能力+自信=成功:自信レベルの4段階と、能力のないイタい自信家vs能力はあるが自信がなく一生スポットの当たらない哀れな人

自信=カリスマ性=優秀なリーダー=チームの成果?

みなさんがこれまで出会った人の中で、一番カリスマ性のあった人はどんな人でしょうか?

小学校の人気先生か、学生時代の先輩か、誰よりもためになる大学の教授か、あるいは上司か、あるいは自分の親族か、いろんな場合が考えられます。

でも、ビジネス・リーダーでカリスマ性のある人、チームを推進させ、大きな目的を達成するリーダーは(恐怖政治をするタイプのパワハラ上司を除き)例外なく、自信に満ち溢れていると思います。

つまり、自信は、リーダーにとって絶対に必要な要素であると言えます。

過去に私が読んできたリーダーシップに関する論文の多くが、リーダーとしての能力の中でももっと有力なカリスマティック・リーダーシップ(charismatic leadership)、トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(transformational leadership)、そしてジェニュイン・リーダーシップ(genuine leadership)の3種類のリーダシップにおいて、自信は必須であると述べています。

優秀なリーダーは、チームメイトに明確なビジョンを示し、彼らの欲求を刺激し、命令されるからではなくて、やりたいから組織の目標に向かって尽力する。

お金やポジションだけでなく、自分の限界を越えたいから、あるいはこのリーダーの壮大な夢を叶える役に立ちたいから、それをモチベーションにチームが一体となって最大のパフォーマンスを発揮する。

そんなリーダーが人の上に立った時、最高のチームワークを築くことができると言われています。

例えば、アイントホーフェン工科大学(オランダ)のル・ブランク、ヴァレンシア大学(スペイン)のゴンザレス・ローマ、華中科技大学(中国)のワンの共同研究によると、カリスマ性などの能力のあるリーダーに率いられたチームは、そうでないリーダーの下についたチームにに比べ、圧倒的に仕事の能率も学習能力も優れている事がわかりました(Le Blanc, González-Romá, Wang, 2021)。

つまり、リーダーのリーダーシップ能力がチームの能力を決定し、リーダーの自信がリーダーのリーダーシップ能力を決定する。つまりは、優秀なリーダーには必ず自信が必要だという事です。

自信に満ち溢れ、自分の目的・ビジョンを理解し、その目的を達成させるための道筋・戦略を持っているリーダーには、チームメイトもついていきたいと思うわけです。

リーダーは「根拠なき自信」ではダメなわけ

しかし、自信があれば良いというわけではありません。人を引っ張るには、最低限の能力と知性は必要であり、性格の悪いリーダーには、頭の良くない信者(被害者)しかついていきません。

例えば、テレビゲームで飛行機の操縦方法を「習得した」と信じている男がパイロットとなった飛行機に乗りたいと思う人がいるでしょうか?僕ならごめんです(Sayre, 2008)。

逆に、ビジネス・スクールを卒業して5年間チームのマネージャーとして活躍し、重要なプロジェクトの責任者にも何度か抜擢され、何度かの失敗を重ねながらも成長し、多くの実績を残してきた人が、「私はまだまだ無能ですから、人の上に立つなんてとんでもないです」と言っていたら、その人はそれこそとんでもないキャリアアップのチャンスをドブに捨てることになります。

人間を、

  1. 能力も自信もない人間
  2. 能力はないが自信はある人間
  3. 能力はあるが自信はない人間
  4. 能力も自信もある人間

の4種類に分けるとしましょう。

多くの場合、人間は1の能力も自信もないところから始めます。

それが経験を積み、徐々に自信とプライドをつけていくのですが、それと実力が伴っていないと2の能力はないのに自信だけある人間になってしまいます。いわゆる「勘違いの人」です。

これは先程の頭のおかしいパイロットの例のように、組織を破滅に向かわせます。このカテゴリーには、若くて経験がないのに何故か根拠のない自信のある「世間知らず」のタイプと、過去には実績をあげて来たが、時代の流れとともに技術も発展し、昔の方法論や技術が通用しなくなっているのにそれを受け入れず、頭がセメントと化している「老害」のタイプとがあります。

3は、先程の「私はまだまだ無能ですから」のタイプです。あなたはいつまで「無能」でいるつもりですか?いつまで言い訳をして先に進まないつもりですか?という事です。

自信を持つに値するベースラインの能力の見極め方

では、自信を持っていい能力のレベルはどれくらいでしょうか?

米国のセイルによると、能力の成熟度にも4段階あります。

  1. 自覚のない無能
  2. 自覚のある無能
  3. 自覚のない有能
  4. 自覚のある有能

まずは、1の自覚のない無能が出発点です。自分のどこが足りていないのか、理解できていない状態です。

漫画『スラムダンク』の主人公の桜木花道が初心者のとき、監督の安西先生自らのプライベート・レッスンをするときに、まず花道の下手くそなシュートのフォームをビデオで撮影して本人にみせ、下手くそなところを理解させるところから始めました。

まずは自分の足りていないところを自覚する所から始まるわけです。

自分の無能を自覚したら、次の段階が2の自覚のある無能です。自分に何が足りていないのか理解している状態で、でもまだその弱点が克服できていない状態です。でも、自分が足りていないのがどこなのか特定することができれば、あとは足りていない能力を効率的に磨いていくだけで、自ずと改善されていきます。

最近は、弱点を克服することよりも強みを伸ばすことが重視されています。しかし、「最低限必要なレベル」とは分けて考える必要があると思います(例えば、リーダーに対人スキルなど)。

そして、いつか3の、有能なのにそれに気づいていない状態がやってきます。自分の能力が及第点に達しているより先にそれに「気づく」ということはありません。必ず能力は達しているのにそれに気づいていない状態が先に来ます。

そして、あるとき4の自分の能力が自信を持つのに値すると気づいた状態になれます。それは、他者評価の場合もあれば、客観的な成果をあげたとき、そう思う場合もあるでしょう。

「イタい」と「自信」は紙一重のタイミングの差。だから自己客観分析力は必須

この見極めとタイミングは非常に大切であると言えます。従って、何かで成功を納めるには、自分を客観視する力がとても大切になります。

過小評価すれば、結局それが萎縮したあなたへの他者からの評価になるし、過大評価すれば、イタい奴だと思われて誰もついて来ないでしょうし、仮にあなたを盲信してついて来る人がいたとしたら、いつかあなたは組織を滅ぼす死のパイロットになるかもしれません。

自己分析は日本人は苦手な人が多いですが、元大リーガーのイチローは、すごく深く自分を客観視する選手だと思います。日本人であそこまで深く客観視している人はなかなかいません。YouTubeなどで過去のインタビューの動画を見ても本当にそう思います。

他にも、ボクシングの井上尚弥チャンピオンや、テニスの錦織圭選手も、この能力が高いことが窺えます。

やはり、世界でトップクラスになる人は、この自己客観視の能力に優れており、おそらくそのために、それなりの事故観察に時間と労力を費やしているように思います。

逆に、アスリートでも実業家でもサラリーマンでも、失敗してポジションから転落してしまう人は、どこか自己分析を見誤っています。

歴史を見ても、偉大なリーダーの最後は、やはり人のアドバイスを聞けなくなり、傲慢になってしまっています。

有名なところでも、晩年の織田信長と豊臣秀吉、ナポレオン、スポーツに戻りますが、ジェームス・ダグラスに敗北を喫した時のマイク・タイソン、などもこれに当たると思います。

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まとめ

  • 成功するためには、能力と自信の両方が必要。
  • 自信と能力の関係では、1. 能力も自信もない人間、 2. 能力はないが自信はある人間、 3. 能力はあるが自信はない人間、 4.能力も自信もある人間、の4種類がいる。
  • 必要な能力レベルに達するには、1. 自覚がない無能、2. 自覚がある無能、3. 自覚がない有能、4. 自覚がある有能、の4段階を通過しなくてはならない。
  • 自分の能力を正確なタイミングで自覚するために、自己客観分析能力は極めて重要な要素である。

注釈

  1. charismatic leadershipとは、人間的な魅力(カリスマ)をもって追従者を動かし、成果を上げるリーダーの能力のこと。日本では、しばしば怖い上司がカリスマティック・リーダーとみなされる場合が多かったが、こんにちではジェネレーション・ギャップやパラハラ対策の影響により、この傾向は少なくなったが、まだ見られる。
  2. transformational leadershipとは、人の心を動かし、追従者が利己のためではなく組織のために貢献することにより自己実現をしたい、より高みを目指したいと考えさせ、組織にポジティブな変革をもたらすリーダーの能力こと。多少研究者によって定義や意見が異なるが、charismatic leadershipと同一視されることもある。
  3. genuine leadershipとは、リーダーが嘘をつかず、ありのままの自分を曝け出し、ブレずに自分の信条を貫くことにより、それに同調する追従者との信頼を築き、これを求心力としてチームを成功に導くリーダーの能力のこと。

References

Le Blanc, P.M., González-Romá, V. and Wang, H., 2021. Charismatic leadership and work team innovative behavior: The role of team task interdependence and team potency. Journal of Business and Psychology36(2), pp.333-346.

Sayre, K. 2008, Unstoppable Confidence: How to Use the Power of NLP to Be More Dynamic and SuccessfulMcGraw-Hill

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