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『スーツ』の英語表現③ – ユーモアは皮肉が基本。正論を言ったのに具体例を求められ

前回の続きです。

※まだ見ていない人には、若干ネタバレになる可能性があります。

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Off the top of my head?

私が最初に思いつくものでいい?

Louis: Can you give me a specific?

Jessica: Off the top of my head?

What is your point?

だから何が言いたいんだ?

日本語の文字にするとちょっと喧嘩腰に聞こえますが、英語では多くの場合、相手との関係やコンテキスト、言葉のトーンなどでニュアンスが違います。

日本人は結論を最初に言わないので、ごちゃごちゃ話が長くて結局何が言いたいのかわからない場合、こう言われるかも知れません。

Don’t beat around the bush. What is your point?

Redefine yourself in the firm

あなたの存在を一新する

Jessica: My point is, if you let this thing go, you can change the entire course of your relationship with Scottie−and who knows?−maybe redefine yourself in the firm.

let this thing goは、この件に関はもう忘れる(文字通り忘れるのではなく気にしない)。accept it and move on.

redefineとは再定義するという意味ですが、文字通り、存在意義を一新する、イメージを変える、(比喩的に)生まれ変わる。

Words to live by.

目から鱗だ。人生の教訓にします。それこそ俺のモットーだ。

live by somethingは、何かをモットーとか座右の銘とかポリシーにして生きるという意味で、感銘を受けた、という意味です。ルイスのジェシカに対する台詞です。

ただ、初見の僕には、この時点で、ニヤニヤしているルイスが何を考えているのかわかりません。

Louis: Words to live by. Jessica, you may have chanced my entire outlook on life.

ジェシカ、あなたはたった今、俺の人生観を180度変えたかもしれないよ。

上司や顧客に何か言われて、非常に感銘を受けた際に相手をちょっとヨイショするとき使えます。あんまりわざとらしく聞こえないようにするため、本当に感動したときのみ使うよう注意しましょう。あと、怒られたときとか。

Thank you for the valuable lesson. Those are words to live by.

You did poach my client on a technicality.

確かに、あなたは俺のクライアントを規則を使って奪った。

ジェシカに人生レッスンを吹き込まれたルイスは、プレゼントを持ってスコッティに会いに行きます。

当然スコッティは会議的です。

あんなことがあった後に私にギフト?何それ?爆弾じゃないの?

それに対してルイスは返します。

poachは面白い単語で、ビジネスでもよく出てきます。卵を殻なしで茹でる、とか、料理で火を通すという意味がありますが、 ビジネスで出てくると、ズルをして獲得する、奪い取る、という意味で出てきます。

南アフリカに行った時、サファリでガイドのお兄さんが、サイの紹介をしながら、ポーチング(poaching)つまり禁猟区でサイを狩る、違法ハンターの事を涙を浮かべて話してくれました。サイのツノは長寿薬になると信じている中国系の富豪のため、サファリのサイのツノが狩り取られていると。怒りでお兄さんと一緒に涙したのを覚えています。

あとは、契約を破って販売代理店やブローカーを差し置いて直取引するときなどもpoachを使います。代理店契約などには、よくanti-poaching clause (直取引禁止条項)が出てきます。

You poachedではなく、You did poachとdidを使ってその部分が強調されているので、日本語で「確かに」という訳をつけました。発音するときはこのdidを強調します。だから書くときには、You did poach my client on a techinicality.とイタリック体を使って強調する場合もあります。

on a technicalityは、テクニカルな小技を使って、というような意味です。遅刻に関する規則を利用して顧客を横取りされたことに怒ったルイスの一言です。

ちなみに、technicalityの発音は「テクニカリティ」よりも、「テクナケアリティ」です。

It’s been pointed out to me that I have certain proclivities that need to be adjusted.

俺はちょっと良くない癖があってそれを直すべきだと言われてね。

It has been pointed out to me that…は、誰かにこういう事を指摘された、という意味で、受け身にすることにより、Jessica pointed out to me that…ではなく、具体的に誰に指摘されたかの情報を明確にすることを回避しています。また、誰が指摘したかは重要ではないニュアンスも作っています。わざと受身(passive)にする方法は、主語述語を日本語以上に主語述語を明確にしてセンテンスを作る英語によく見られる手法です。

proclivities that need to be adjusteddですが、proclivityは言動のパターンや傾向を表し、それ自体は悪い言葉ではないのですが、need to be adjustedで、修正する必要がある、という客観的事実のみを伝えるイメージです。

Jassica told me that I my behavior needs to be improved.とかよりも、かしこまって、客観的で、冷静な感じがします。

I’m saying I would like us to be friends.

つまり、あなたと仲良くなりたいと言っているんだ。

friendsをわざと友達と訳さなかったのは、日本語の友達と少しニュアンスが違うと思ったからです。必ずしも友達ではなく、enemyの対義語的な役割を果たす語なので、日本語の「友達」よりも意味が広く、味方という意味も含まれていて、やや広義です。日本人よりカジュアルに使っている気がします。あるいは、アメリカにはもともと日本よりもフレンドリーな文化があるのかも知れません(これは日本語を知っている英語ネイティブでも気づかないニュアンスではないかと思います)。

ちなみに、日本語の「友達」と同じような使われ方もします。女子高生が、”She is not my friend.”と言ったら、多分日本語の「友達」とほぼ同じ意味だと思います。

It’s very sweet.

とても”スウィート”だわ。

これは日本語では訳せません。直訳すると、「とっても甘い」となりますが、誰かに褒められたり、親切にされたとき、That’s so sweet (of you). You’re so sweet.などと言います。

日本語で無理やり意味を解説すると、甘い=舌に心地よい感覚ですよね?気分的に甘くて嬉しくさせる、という意味です。しかも、どちらかというと、自然現象よりも、相手の気持ちが嬉しい場合に使われる事が多い表現です。似た意味の言葉だとkindですね。

A: You’re the world’s “bestest” dad.

B: That’s so sweet. Thank you, honey.

あと、スラングで、coolという意味でsweet使われることもあります。

Trust me, archibald, I’m way past you.

わかってないようだから教えてやるよ、英雄さん。俺はあんたより遥かに先に行ってるよ。

trust meは、わかっていないようだから教えてやる、とか、反論があるかも知れないが、というような場合によく使われます。日本語だったらドラマとかでよく使われる訳は、「聞きな」とか?

archibaldは男らしさの象徴みたいな名前で、イキっている男性に皮肉たっぷりで返すようにハーヴィーが使っています。

Eliot: You if had had rebuttals like that, maybe you would have gotten past me in moot court just once.

Harvey: Trust me, archibald, I’m way past you.

昔もしそれだけ口が達者だったら、もしかしたら一回くらい模擬裁判で俺に勝ってたかもな、と宣うエリオットに向かって、涼しい顔してハーヴィーが返した一言が、上の例文。

アメリカでは、敵に怒りをあらわにして凄むのはバカで、冷静にスマートな皮肉で返すのが文字通りクールなんですね。弁護士だったら尚のことです。

Sounds like somebody’s trying to compensate for three huge loses.

誰か自分の3回の大きな惨敗を補おうと足掻いているように見えるな。

エリオットも負けマジと反撃しますが、ハーヴィー・スペクターを3度模擬裁判で下したにしては器が小さいですね。その語彙力は、人をむかつかせるためにあるのかと思うくらい。

The cage match is on. Two men enter, one man leaves.

ケージの試合が始まった。二人の男が入場し、一人だけが去る。

ここでいうケージはMMA=総合格闘技などに使われる闘技場の事で、二人の男がそこに入り、生き残った勝者のみがケージを出ることができる、いわば血で血を洗う戦いです。

もちろん、ここでは比喩的に使われます。ビジネスでもこういう戦いの場はあります。

I was hanging on to not flunking out by a thread.

落第して退学にならないように首の皮一枚で頑張ってきたんだ。

hang on (to someting) by a threadは、糸一本で何かにぶら下がる、というような意味で、頑張るという意味のhang onの元の意味の「ぶら下がる」と「糸」を掛けた表現です。

hangの発音は「ハングリ」でも「ヘアング(h)」でもなく、「ヘイング」です。アメリカ英語では、-angというスペルではaをほぼ完全にエイと発音します。

Eliot: In law school, I had nothing. No friend, no girlfriend, not respect. The truth is, I was hanging on to not flunking out by a threat.

「落第しないこと」にぶら下がる、という表現を英語ではするんですね。

ストーリー上は、ハーヴィー、マイクのコンビニで裁判の緒戦で苦汁を飲まされたエリオットは、マイクに会いにきて、自分の弱さや苦い過去を打ち明けます。いったい何を考えているのかわからず、思わず聞いてしまいます。

Mike: Why are you telling me this?

というわけで今日は13分まで行きました。まだ3分の1です。

僕自身もこの後の展開が気になるところですが・・・続きは次回。

Reference

“Moot Point” (2014) Suits, season 3, episode 13. Directed by Kevin Bray. Written by Aaron Korsh and Daniel Arkin, March 20.

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