※まだ見ていない人には、若干ネタバレになる可能性があります。
今日で4回目になります。
マイクに急に会いに来て自分の惨めな過去や弱みを見せたエリオットでしたが、マイクはこの男が完全なるペテン師だと見抜きます。
学生時代はモテなかったし、成績も優秀じゃなかった。結婚もしていないし、子供もいない、これといってパッとしたキャリアもない。そんな自分の唯一の心の拠り所は、過去にハーヴィーを模擬裁判で3度下したこと。その過去の呪縛から逃れたい、そのためにマイクにすがるエリオット。
常に熱いマイクですが、先の裁判で既にエリオットの経歴を調べ上げていました。
彼にはれっきと家族があり、大手ロー・ファームでおそらくかなりの収入を得ているであろうことも調べ上げています。そこはさすがマイク。
エリオットの話の矛盾をついた途端、エリオットは豹変して別の一面をあらわにします。彼は家族を嫌い、唯一大手で働く理由は妻や子供にお金さえ与えればほっといてくれるからだ、と吐き捨てるように言います。
この男の言っていることは何も信じられたいと気づいたマイクは、自分と一緒にエレベーターに乗って、ピアーソン・スペクターのオフィスから立ち去るように言います。エリオットをオフィスに残して行くのは危険だと判断したのです。
Good call.
いい判断だ。
エリオットは皮肉たっぷりの邪悪な笑みを浮かべて言います。
ここでいうcallは、電話とは関係なく、decisionのことで、判断という意味です。choiceとも似ています。
It’s your call. という表現がビジネスでよく使われますが、これは、「それは、あんたが決めることだ」「あなたに任せる」くらいの意味です。It’s up to you.より、英語慣れしてスタイリッシュな感じがします。
ちなみに、callの発音は、「コール」ではなく「カール」です。
Eliot Stemple, that’s a blast from the past.
エリオット・ステンプル。(色んな意味で)懐かしいね。
a blast from the pastはセットで覚えるべき成句で、「すごく懐かしい思い出」です。
blastは爆発、という意味からもわかるように、ただの思い出ではありません。すごく懐かしい思い出です。
ここではネガティブな意味で使っていますが、ちょっと皮肉めいた表現となっています。
アメリカ人は相変わらずスマートなサーカズムを好むようで。
皮肉的表現でなくても、ビジネスにおいて、懐かしい思い出、良き思い出はたくさんあると思います。そんな良き思い出を分かち合いたいときの表現として使えるのではないでしょうか。
Instead of offering help where it is not needed, you should focus on Louis Litt.
要らぬ世話を焼くより、ルイス・リットのことに専念することだ。
offer helpは、助けてあげようかと聞くこと。where it is not neededは、必要のないところに。
Caught a power nap between 4:30 and 4:45.
4時半から4時45分までパワー・ナップしたんだよ。
これで一時期流行った「パワー・ナップ」という言葉が、和製英語ではなくれっきとした英語だという事がわかります。ルイスは、catch a power napというフレーズを使っていますが、sneak a power nap, do a power nap、take a power napでも行けます。
Louis: Nothing makes me happier than to spend all night helping out a friend.
Harvey: You were up all night?
Louis: Caught a power nap between 4:30 and 4:45.
ルイス:一晩中友達を助けるための作業をすることほど嬉しいことはないよ。
ハーヴィー:一晩中起きてたのか?
ルイス:4時半から4時45分までパワー・ナップしたんだよ。
4:30 and 4:45の発音は、four thirty and four fourty-fiveです。
もっとかしこまって言いたい場合は、half past four and a quarter to fourなどの言い方もありますが、このドラマではそんな言い方していません。
What did you come up with?
どんなのができた?
Per your instructions, I went through eight years of Pritchard Holdings’ corporate returns with a fine-tooth comb.
お前の指示通り、プリチャード・ホールディングスの8年分の法人税還付履歴を念入りに調べたぞ。
per your instructionsは、あなたの指示通り。上司に言われたことをやった場合、何か問題があったときに上司に責任を取らせる場合などに使えます。もちろん、yourを他の代名詞や個人名に変えることも可能です。誰の指示かを明確に言及することを避けたい場合、あるいはそれが重要でない場合は単純に、per instructionsとも言い換える事ができます。
go through somethingは、何かを調べる、読む、という意味で、with a fine-tooth combは、読んで字のごとく、「きめ細かいクシで」つまり抜けのないようにローラー作戦で、しっかり念入りに、と解釈できます。
I caught every mistake there was to find.
全部の間違いを拾ってやったよ。
これはフレーズ丸ごと覚えられます。
You know what? Harm was done.
いいか、もう被害は出てるんだよ。
ルイスは、スコッティがハーヴィーのパソコンから彼を装い、ルイスのハーヴィーへの好意を利用して徹夜で仕事をさせたことに気づき、憤慨します。
I’m just dropping this by.
ただこれを渡しに来たの。
drop by は気が向いたときに立ち寄ると言う意味がありますが、ものをdrop byする、と言う形でも使われます。
drop off somethingという、モノを置いたり、誰かを車に乗せてある場所で下ろすと言う意味の熟語もありますが、こちらの方が、justとのコンビネーションで、ついでに置きに来た感じが出ています。
Louis: What do you want, Danna?
Danna: I’m just dropping this by.
I don’t believe in doing things behind people’s backs.
私は陰で何かをするのは好きじゃないの。
I don’t believe in somethingは、何かを信じない、つまり何かの正当性を信じない、間違っていると思うからやらない、という意味です。自分の信条に反するという事です。
do things behind someone’s backは、誰かに隠れて、陰でという意味です。talk ill of someone behind his/her back(誰かの陰口を言う)は、TOEICの初級で出てきそうな基本熟語ですね。
ビジネスで、特に海外においては、信念のない人間は信頼されません。I don’t believe in somethingは、間違っている事をされそうになったとき、濡れ衣を着せられそうになったとき、誰からの行動を諫めるとき、使える表現です。
You want to play it this way, fine.
あんたがそう来るなら、こっちにも考えがある。
社内政治的な駆け引きの勝負をトランプか何かに擬えての表現です。
Louis: You want to play it this way, fine, but if you think you can outsmart me, you’re gonna get “Litt up.”
outsmartは、誰かを頭脳戦で倒す、の意味です。
Littはルイスの名字なので、「眠れる獅子を起こす」といった感じ意味なのでしょう。
lit upという、 酔っ払う、ドラッグでハイになる、照らされる、などの意味がある熟語をもじった駄洒落と思われます。アメリカにも、こういうしょうもないオヤジ・ギャグが存在するんですね。
ちなみに”You’ll get Litt up“の脅し文句はダナ・スコッティには効かず、子供みたいねー、今からフェイスブックでディスってやるわ、と鼻で笑われて終わります。
We’re going to take this thing apart limb by limb so that little Miss Bullsh– wished she’d never heard the name “Louis Litt.”
この案件をことごとく分解する。そしてあのク○女はルイス・リットという男の名を聞いたこと(関わったこと)を後悔することになる。
日本語でうまく表現できないですが、wish she didn’t hear my nameという表現が悪趣味で好きです。名前を聞く=知り合う、関わるというのを婉曲的に表現する英語独特の味が出ています。これ、伝わりますかね?
take something apartはバラバラに分解する事で、limb by limbは手足を一本ずつバラバラにするように念入りにやる表現ですが、非常に生々しい表現です。まるで人間を八つ裂きにしているような。
You made a pitch to the chairman of Kyoto Computers.
あなたは京都コンピュータの会長にセールス・プレゼンテーションをした。
make a pich to someoneで、誰かに向かってセールス・プレゼンテーションを行うという意味になります。
Mike: Mr. Walker, in October of last year, you made a pich to the chairman of Kyoto Computers. How did that pitch go?
Walker: It went amazingly, right up until when they told us there was no way they could actually buy our product.
right up until =何かが起きる直前まで。
If Kyoto did even 1 dollar worth of business with us.
もし我々と1ドルの取引でも発生したら。
do …worth of businessで、いくらの取引を行う、という表現になります。
Harvey: Why is that?
Walker: Because Janus thretedned to withhold their microchip if Kyoto did even $1 worth of business with us.
ウォーカー氏と取引を進めようとしていたキョウト・コンピュータは、ウォーカーと取引をしたらマイクロチップの供給を止めるぞ、と、ある会社から脅されているようです。
We control the market because our product is better than yours.
弊社が市場をコントロールしているのは、弊社の製品が御社の製品より優れているからです。
完全に喧嘩モードですね。でも、本当に自社製品が市場で一番優れており、嫉妬に駆られた競合から不当な競争だと非難された挙句、姑息な手で陥れられた場合、こういうことを言いたくもなります。
ドラマでのこのセリフはエリオットが言ったモノなので、上記のような理由はまったくないと思います。本当にイヤな男です。
似たような日本語のセリフが、「ゴミダメからはゴミしか出てこないと申しているのです」
Those things aren’t worth the paper they’re printed on.
こんなゴミ情報は、印刷された紙ほどの価値もない。
喧嘩相手から、自分を陥れるニセ資料を叩きつけられた時の返しの一発です。
You’re just a one-trick poney, Archibald.
バカの一つ覚えだな、英雄さん。
ハーヴィーが、何度もエリオットに苦い思いをさせられたトリックに対して、もうその手には乗らねえよと挑発して返す言葉です。
If it’s not crispy, it’s not bacon.
カリッとしてなきゃ、それはベーコンじゃない。
マイクが同僚の音声解析の達人ベンジャミンに賄賂のベーコンを贈った際の会話です:
Benjamin: I already had breakfast, Michael.
Mike: Maybe, but that’s a bag completely filled with bacon.
Benjamin: Crispy?
Mike: To quote my friend Benjamin, “If it’s not crispy, it’s not bacon.”
ベンジャミン:朝ごはんなら、もう食べたよ、マイケル。
マイク:そうかい。でも紙袋いっぱいのベーコンだよ。
ベンジャミン:カリっとしてるか?
マイク:僕の友人ベンジャミン君の言葉を引用すると、「カリッとしてなきゃ、それはベーコンじゃない」
本人の前で本人の言葉を引用するところが、賄賂の効果を倍増させるかの如く忠誠を表しているようで、それでいて悪戯っぽい。僕から見ると、これも英語的なユーモアです。
If it is not A it is not B.は色んなものに使えます。このitは、何にでも当てはまります。
If he is not handsome, he is not a man. ・・・これは男性差別。
If it sells, it’s art. ってどこかで聞いたような気がする。売れるならなんでも芸術だし、お金にならなきゃ芸術じゃないということでしょうか?風刺だと思うけど、イヤな考え方です。
I don’t deserve it.
俺には受け取る資格はないよ。
賄賂のベーコンで買収して仕事を頼もうとするマイクに、それは無理だから受け取れないとベンジャミンは丁重にお断りします。
This firm is too cheap to go with my recommendation.
このファームはケチで俺のお勧めの備品を買ってくれないんだよ。
go with your recommendationで、お勧めのものを採用する。
ここではマイクの同僚ベンジャミンが、高性能のカメラ・レコーダーを買ってくれないことを嘆いています。
This company is too cheap…をdepartment, business unitとか、会社、部門、事業部などと変えることができます。
What do you have?
なんか取れたか?
依頼した調査の結果報告を求めるとき、資料作成の進捗を尋ねるとき、部下とか、比較的仲の良い相手には、こういうシンプルな表現が使えます。
Harvey: What do you have?
Mike: Nothing.
Harvey: Then we go with what we got.
ハーヴィー:なんか取れたか?
マイク:いや何にも。
ハーヴィー:じゃあ、あるものだけで行くさ。
最後のハーヴィーのセリフに、willが入らないのが英語的です。「こう言う場合は、あるものだけで行くさ」と、自分の信条に照らし合わせ、第三者的というか、やや客観的で、ナレーション的に淡々と事実だけを述べている感じです。このニュアンスも伝わるでしょうか?
今日は、目標の半分を超えました。
続きはまた次回!
Reference
“Moot Point” (2014) Suits, season 3, episode 13. Directed by Kevin Bray. Written by Aaron Korsh and Daniel Arkin, March 20.