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『スーツ』の英語表現⑤ -ビジネスは性善説が基本。でも駆け引きは必要?

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※まだ見ていない人には、若干ネタバレになる可能性があります。

半分を超えました。

ペースを上げず、ドラマを見ながら、ビジネスで使えそうな表現、しかもその辺のサイトや参考書に書かれている基本的な表現ではなく、スタイルのある、キャラクターの味がある、英語文化を多分に含んだユニークな表現を解説していきます。

このシリーズを最初から読む場合。

He`s saying stample bluffed, so now we’re gonna bluff.

彼(ハーヴィー)は、ステムプルが鎌を掛けてきた、だから今度はこっちが鎌を掛けると言っているんだ。

安いビデオカメラに録音された音声の解析を依頼され、カメラが音声を捕らえていなかった為にできなかったベンジャミンは、ハーヴィーの「証拠がないなら、あるもので行くさ」という言葉を聞いて、マイクに、彼は何を言っているんだと尋ねます。するとマイクは答えます。

Benjamin: What’s he talking about?

Mike: He’s saying Stemple bluffed, so now we’re going to bluff.

bluffは動詞としても名詞としても使われる、ポーカーのブラフのことで、比喩的に嘘をついて脅しを掛ける、相手の心を揺さぶる、鎌を掛ける、と言う意味としても使われます。日本語でも「ブラフをかます」などと言ったりします。

どんな業界においても、ビジネス交渉は心理戦です。刀の代わりに言葉を交わす、血を流さない戦争と言ってもいいかもしれません。当然ブラフも使われます。

win-winを理想とする現在のビジネス風潮ですが、それでも相手は善人ばかりだなどと甘い事を言っていては、いつか企業の食い物にされるのがオチです。

大事なのは、ビジネスパーソンは現在における侍と同じ、義理と忠誠を重んじながらも常に護身のために帯刀する。相手を信じ、期待通りの仕事をするチャンスを与えながらも、裏切りのための隙は見せない事だと考えています。

They’re beig invstigated in by the FTC for fraud.

彼らは今詐欺の容疑で連邦取引委員会から取り調べを受けている。

FTC= Federal Trade Commission (連邦取引委員会)。日本でいうところの公正取引委員会のようなものでしょうか。

fraudは詐欺行為。

beingはここでは必要な動詞の進行形(gerund)で、取り調べを受けている状態が現在進行形で続いているニュアンスを表します。

Louis: Whoa, I’m sorry. Did you just say Whitner Group? Right now they’re being investigated by FTC for fraud.

Danna: What?

Louis: Yeah, it was just announced this morning.

We can’t be in bed with criminals.

犯罪者と”寝る”(協業する)ことはできないんだよ。

ドラマで使われている。セクハラにならないのがすごいが、sleep with someoneは、誰かと寝る、一夜をともにする、懇ろな(男女の)関係になる、という意味ですが、ここでは、犯罪者の仲間になることを意味します。

この表現は『スーツ』に何度も登場します。悪事に巻き込まれたくない時に使っていますが、現実で使いこなすのは、ちょっと注意が必要でしょう。

ただ、英語ならではの面白い比喩だと思ったので加えました。

Cut her some slack.

多めに見てやってください。

Go easy on her. Take it easy on her.などと似ていますが、お手柔らかに、少し緩くしてやって、というような意味です。

クライアントとのミーティング中、スコッティの仕事に手落ちがあったのをルイスは見逃さず、顧客のトムに向かってこう言います。

Louis: I will have another proposal over to you within the hour.

Tom: Thank you.

Louis: Oh, and, Tom, Scottie’s new, okay? So cut her some slack becaue when those training wheels pop off, she’s gonna be really, really good.

training wheel=自転車などの補助輪

pop off=外れる

ここまで屈辱的な「上から目線の褒め言葉」もないでしょう。

I did nothing of the kind. I simply alerted a fried to some possible misdoings.

そんな事は何もしてない。俺はただ単に友人に、可能性のある違法行為について警鐘を鳴らしてやっただけだ。

I did nothing of the kind = そっち系のことは一切やってない。I said nothing of the kind.だったら、それ系のことは一切言ってない。

misdoings = 軽)犯罪、違法行為。misdeeds, wrongdoings, misdemeanors, crime, illegal conducts.

alert someone to something = 誰かに何かを警告する。warn someone about/against something

この「手落ち」も、ある種ルイスが仕組んだもの。ルイスはスコッティに対してすっかりドヤ顔(a smug face)です。

If they are as clean as they say, I’m sure they’ll be exonerated.

もし彼らが自称するように潔白だったら、当然濡れ衣を晴らして無罪放免になるはずだ。

as clean as they sayは他の形容詞でもよく使われます。直訳の「彼がら自分たちが潔白だというのと同じくらい潔白だったら」という表現は日本語にはなく、ゆえに使いこなすと英語っぽく聞こえるのでここに加えます。

exoneratedは、無罪放免となりリリースされる、というような意味です。

I’m Moby Goddam Dick, and you just swam in my waters.

そのとおり、俺はまさにモービー・ディックだ。そしてお前はすでに、俺の水域に入り込んだ。

ルイスからスコッティへの宣戦布告です。というか、ケンカを受けてたつことの宣言(acceptance of her challenge)です。

Moby Dick (モービー・ディック)は、1851年に発表されたアメリカのハーマン・メルヴィル(Herman Melville)の小説『白鯨』(”Moby Dick”)に登場する恐怖の人喰い巨大クジラのことです。

その前の、スコッティの、

Danna: You really are a dick.”

(dick = 男根、ク◯ヤ◯ウ)

というというセリフに、ルイスは振り向いて、怒りに満ちた顔でこう答えます。

Louis: I’m Mody Coddamn Dick, and you just swam in my waters.

このMobyとDickの間の罵りの単語(Goddamn)は、怒りと、サディスティックな喜びとを強調するために間に挿入されています。

ルイスは、スコッティに、お前は、モービー・ディックの近くの海に入り込んだ無力なスイマーと同じだ、と言ってています。

つまり、俺を怒らせたのはお前だ、覚悟はできているんだろうな、と。

このケンカは、もともとスコッティが自分の力を示すためにルイスにふっかけたもの。

ハーヴィーの恋人だからではなく、実力でシニア・パートナーのポジションを獲得したのだと同僚たちに証明するために始めたものです。

ケンカを売ってきた相手は、手段を選ばす徹底的に叩きのめす性格のルイス。

戦いはまだ続きそうです。

ちなみに、my “waters”と水を表す単語が複数形になっていることにご注意ください。これは英語の決まりなので、暗記してください。

通常水や空は、英語では数えられない名詞、単数系ですが、waters, skiesと複数で使われることがあります。

複数の方が、ややフォーマルで文学的な感じ使われます。例えば、the skiesは、the skyよりも、広大な大空というニュアンスが強く、waterは物質としての水を表すのに対し、watersはどちらかというと水域(water area)という意味が強くなります。

Per your request, this is everything.

これが、あんたに頼まれたもののすべてだ。

per your requestは、以前出てきたper your instructions (あなたの指示通り)に似ており、あなたのリクエスト通り、あなたのリクエストによると、という意味です。

上司に頼まれたものを全部揃えて持っていく際、笑顔でこう言えば、”Thank you.”と言ってくれるでしょう。ただ、その後に、その「すべての資料」(the “everything”)を一緒に確認する作業に付き合わされるかも知れませんが。

Look, I could take the losing, the gloating, and the tauting.

いいか、俺は敗北や、したり顔や、屈辱的な挑発には耐えられる。

Harvey: Look, I could take the losing, the gloating, and the tauting, but I what I can’t take is losing to a coward who’s too afraid to stand up and try to beat me again.

ハーヴィーはポリシーのある男(a man with a code)です。

正当な負けや屈辱は受け入れますが、自分から逃げ回る卑怯者に負けることは、彼の矜持が許しません。

stand up and try to do something = 勇気を持って何かを成し遂げようとする。

I’m coming clean because it’s time to put it to bed.

私は、この事に終止符を打つため、白状しているんだ。

come clean = 正直にいう。白状する。

put something to bed = 解決する。終わらせる。印刷を開始する。

エリオットはハーヴィーのもとに現れ、過酷の最初の勝利は、実は陪審員を買収したからだと告白します。

You were an arrogant bastard who staked through life without a care in the world, getting everything you wanted from anyone you needed!

お前は、この世の事などお構いなしに、欲しいものは欲しい人から何でも手に入れている、傲慢なブタヤ◯ウだった!

エリオットの嫉妬心剥き出しの言葉がハーヴィーに向けられます。

Eliot: Do you want to know why I did that? Because you were an arrogant bastard who staked through life without a care in the world, getting everything you wanted from anyone you needed!

stake through life = 人生を楽々とスケートするようにスムーズに生きる。

without a care in the world = 世俗の悩み(一般の人が悩む事に悩まされること)など一切なく。

ビジネス・スクール時代のハーヴィーは、きっとそんな若者だったのでしょう。

今日はここまで、このエピソードは、あと残り16分あります。

References

“Moot Point” (2014) Suits, season 3, episode 13. Directed by Kevin Bray. Written by Aaron Korsh and Daniel Arkin, March 20.

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