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相手を論破する急所はここだ!人間のロジックは誤謬(ごびゅう)だらけ

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相手を論破するには、相手のロジックの破綻を暴く必要があるわけですが、そのためには相手のロジックのほつれを見つけ出し、そこに的確な「有効打」を与えるのが前提となります。

ただし、大前提として、相手を論破するには、残念ながら相手にも一定の論理的な思考力が必要です。

ディベートは通常第三者が見守る中で行われ、どちらの論が優れているかを判断するのはオーディエンス、と言う形式が採られます。それは、将棋と違い、ロジック力に劣る人間は、自分のロジックの破綻に気づけないからです。

感情論に駆られた相手に自分の議論が論破されたかどうかなどとは無関係な世界に行ってしまうので、そういう人を「論破」して認めさせるのは不可能です。

ソクラティック法とクリティカル・シンキングで、オールラウンドに強い人材になれる5つの理由

人を動かすには、ロジカルな思考だけではダメで、さらに自分の感情と他者の感情をコントロールするスキルも必要ですし、場合によっては相手に好感を持たれるような外見や仕草、ジェスチャーなども必要です。アメリカの高校や大学のスピーチ・クラスでは、目線の置き方や身振り手振り、声のトーンの使い方まで学びます。

ロジカルに考えるスキルは、あくまでも感情に流されず、クリティカルに、ロジカルに、冷静である程度思考力のある相手に説明したり、少なくとも自分が騙されないようにするための能力です。

基本的な間違い

結局は、演繹法(deductive reasoning)の基本中の基本、

A is B.
AはBである。

B is C.
BはCである。

Therefore, A is C.
ゆえに、AはCである。

の三段論法(syllogism)を発展させたものです。

これを実例にすると、例えば以下のようなロジックがあります。

人間は死ぬ。

ソクラテスは人間である。

ゆえに、ソクラテスは死ぬ。

これは、論理的に正論(sound reasoning)です。

ただし、その為には、上の2つの前提が正しくなくてはなりません。

例えば、

人間は永遠に生きる。

ソクラテスは人間である。

ゆえに、ソクラテスは永遠に生きる。

これは、「人間は永遠に生きる」の前提がおかしいので、おかしな結論しか導くことしかできない例です。

逆によくあるのが、

AはBである。

AはCである。

ゆえに、BはCである。

としてしまうことです。確かに、たまたま結論が正しい場合もありますが、これを”sound reasoning”とは呼びません。たまたまです。

例えば、以下のようなロジックは、よく考えればロジックが間違っているとわかりますが、実際にこの間違いに陥っている人はたくさんいます。「偏見」には、この類のものが多いです。

オサマはイスラム教徒だ。

オサマはテロリストである。

ゆえに、イスラム教徒はテロリストだ。

父は釣りが好きだ。

私は父が嫌いだ。

ゆえに、釣り好きにロクな奴はいない。

上のロジック(説)を立証するには(偏見に満ちたロジックですが)、多くのデータを集め、最初のステートメントと2番目のステートメントの関連性を調べ、統計学的に説得力のあるデータが必要です。

では、これはどうでしょうか?

タバコを吸うと、肺がんになるリスクが高くなる。

山田はタバコを吸う。

ゆえに、山田は肺がんになるリスクが通常の人より高い。

タバコと肺がんの関連性は学術データによって有力となれているため、この議論は正論かどうかはまだ意見の分かれる余地は残っていますが、相当に説得力のある議論(“valid reasoning”)となります。

では、これはどうでしょうか?これはある政治団体の代表の人が、ネットで論客たちと国葬を反対する立場で議論していた時に主張した論法です。

国葬を行うことは、日本が軍国主義化する予兆である。

日本が軍国主義化すれば、日本とアメリカは中国に侵略する。

ゆえに、国葬を行えば日本はアメリカと中国に侵略する。

私たち一般人からしてみれば、最初と2番目のステートメントにかなり理論の飛躍があるように思えます。国葬と軍国主義、軍国主義と中国侵略の関連性が、いまいちピンときません。

それ以外では、

A is B. ソクラテスは人間である。

C is not A. アリストレスはソクラテスではない。

Therefore, C is not B. ゆえに、アリストテレスは人間ではない。

とか、

A is B. ソクラテスは人間である。

A. is C. ソクラテスは哲学者である。

Therefore, B is C. 故に、人間は哲学者である。

とか、

A is not B. ソクラテスは馬ではない。

B is not C. 馬は哲学者ではない。

Therefore, A is not C. ゆえに、ソクラテスは哲学者ではない。

などはいずれもロジック上の間違いです。


よくある15の誤謬

上記を基本として、私たちが陥りやすい誤謬をいくつか上げます。相手の主張に以下のいずれかが見つかったなら、容赦無く指摘して論破します。

人身攻撃 Ad Hominem

ラテン語でアド・ホミネム。本件とは関係のない話をして、相手のロジックではなく相手自身を攻撃する誤謬です。

山田は錦織選手よりもジョコビッチのファンらしい。
だから山田は島根県警の警察官には相応しくない。

山田がどのテニスプレイヤーを応援しているかということと、日本のテニスプレイヤーの出身地の警察官の職業適正は関係ありません。

無知を訴える議論 Appeal to Ignorance

自分の議論を間違っていると証明する証拠がないからという理由で、自分が正しいとする論法です。

俺は神様はいると思う。いない証拠はあるか?ないだろ。それがいる証拠だよ。
産屋敷耀哉:人を襲わないという保証ができない。証明できない。ただ人を襲うという事もまた証明できない。

藁人形 Straw Man

議論に上がっていることとは違う話(多くの場合は議論に上がっていることの極論)を引き合いに出し、さも自分が正しいかのようにドヤ顔で論破を気取ります。

山田:日本にもう少し子供がバスケットボールをやれる場所が多いといいんだけどなあ。
川田:日本人がどれだけ頑張ったところで、マイケル・ジョーダンになれるわけじゃないから必要ないよ。

別に子供がバスケットボールをやるからと言って、マイケル・ジョーダンみたいに上手くならないと無意味と言うのは、極論です。

虚偽の二択 False Dilemma/False Dichotomy

本当は他にも選択肢はあるのに、あたかも2つしか選択肢がないかのように言ってその二つから選ばせようとすることです。脅しとも言います。

御社の事業をV字回復させるには、私の会社と3ヶ月のアドバイザリー契約を結ぶしかありません。今日契約すれば料金が1割オフになります。今日契約しますか、それとも明日にしますか?

虚偽の二択を2連続で入れています。まず、事業を回復させる方法は他にいくらでもあります。次に、今契約か明日契約化の二択だけ与えて、契約しないという選択肢を無意識に除外しています。

話の飛躍 Slippery Slope

一つのアクションがきっかけになって、一連の出来事を引き起こし、最終的には途方もない結果になってしまうという議論を展開する例です。

国葬を行うことは、日本が軍国主義化する予兆である。
日本が軍国主義化すれば、日本とアメリカは中国に侵略する。
ゆえに、国葬を行えば日本はアメリカと中国に侵略する。
AIが導入されたら、今やっているエクセル作業を人間がやらなくてよくなる。
エクセル作業がなくなれば、エクセルのスキルが無意味になる。
エクセルのスキルが無意味になれば、エクセルを使う職業は仕事がなくなる。
仕事がなくなった人は、ホームレスになる。
AIが導入されてもホームレスになりたくないから、エクセルを使うのをやめよう。

循環論法 Circular Argument

ぐるぐる回っていて、理由が結論に、結論が理由になっているような論法です。

神は存在します。なぜなら聖書にそう書いてあるから。
聖書に書かれた言葉は正しいです。なぜならそれは神の言葉だから。

勇足の一般化 Hasty Generalization

少数の信頼性が少なく統計的優位性も全くないデータをもとに一般的な結論を出す、帰納法的論法の破綻です。

こないだ出張でバングラディッシュに行ったら、得意先の社長がベジタリアンで、肉料理が食べられなかったんだよ。あっちの人はみんな肉食べないみたいだね。
こないだ初めて商社の営業2人と商談したんだけど、あいつらチャラいチャラい。商社マンってなんであんなにチャラいのかね?

論点のすり替え Red Herring

まったく関係ない話をして相手の注意を逸らし、相手の行動を巧みに操作して目標を達成しようとすることです。

お巡りさん、僕なんかをスピード違反で捕まえてる暇があったら、もっと巨悪を捕まえてよ。こうしてる間に殺人事件が起こってるのに、警察は全然凶悪犯をつかまえてくれないじゃん。
山田さんの承認なく契約書にサインをしたのはすみませんでした。でも、この契約を結んだおかげで、うちの法務部の杜撰さがわかったのは、よかったですよね。

偽善を訴えかける議論 Appeal to Hypocrisy

ラテン語でtu quoqu(トゥー・クウォークウエイ)とも言います。あなたも私と同じように悪いことをしている、だから私にどうこう言える立場ではない、だから私は咎められない、という論法です。誰が指摘しようが、悪いものは悪いし、違反は違反です。

俺は不倫をした。それがどうした。不倫は文化だ。甲斐性のある男はみんな愛人がいる。お前には愛人の一人や二人いないのか?
父:こら、未成年がタバコを吸うな!
息子:だって父さんだって16歳の時からタバコを吸ってたじゃないか。
加藤氏は私の贈賄疑惑について色々言っておりますが、彼は昔オッキード事件の片棒を担いだ共謀者です。奴の話に耳を傾けることはありません。

因果関係の誤謬 Causal Fallacy

原因から間違った(あるいは根拠がなく無理がある)結論を導き出す誤謬です。

日本とアメリカは今、戦後最大規模の軍事共同訓練をしています。これは間違いなく中国に侵略するためのものです。なぜかって、我が党の刊行する雑誌にそう明確に記載してあるからです。
あなたはバイクに乗っているから筋肉隆々ですね。

埋没費用 Sunk Cost

何かに投資をして望ましい結果が得られなかったのに、ここまでの労力とコストは戻ってこないので、最初に望む結果が得られるまでその投資をやめたり、妥協してハードルを下げられない状態です。その場合は、なんとしても自分の投資の継続を正当化しようとします。

私はもう婚活を10年もやっている。もう40歳になったけど、ここまで頑張ったんだから、ここまできて相手の年収や学歴や容姿を妥協するなんてできない。絶対に自慢できるスペックの旦那さんを見つける。
川田:山田社長、市場は一気にAIに傾いています。もうこれ以上この事業からの利益は見込めません。撤退しましょう。
山田:バカ。今撤退したら、これまでの投資が無駄になる。死ぬ気で投資資金を回収しろ!
川田:でも、どうやって?
山田:それを考えるのがお前の仕事だろう!
鈴木:うさん商事の鷺田さん?先物取引を解約したいんですが。
鷺田:ほんまでっか?今解約したら、300万円の大赤字でっせ。

権力へ訴える議論 Appeal to Authority

権力のある人、権威のある人、有名人のがこう言ったから、それは正しい、という議論です。問題は、その有名人がその分野の専門家であるかどうかです。例えば、キム・ジョンウンが世界平和に関する著書を書いたとしても、誰も読みたいと思わないでしょう。

一度は痩せていた、マライア・キャリーのダイエット論。
早起きすることは人間の新陳代謝を活性化します。マイク・タイソンも現役中は毎朝4時半に起床してロードワークを行なっていました。彼の強さ自身が、そのことを証明しています。

意図的に誤解を招く曖昧な言葉 Equivocation

文字通りの2つ以上の意味がある言葉を使ったトラップです。

私は御社の競合とは仕事をした事はないと言いました。そのことに嘘はありませんが、御社の競合の子会社と仕事をしたことはあります。
野菜は体にいいんです。ジャガイモは野菜の一種です。だからフライドポテトは体にいいんです。

哀れみに訴えかける議論 Appeal to Pity

日本人は、これに陥る人が多く、また、私も含め、そこが日本人のいいところだと思っているところがあります。でもそれは、海外に行くとサッカー(カモ)にされるリスクを孕んでいます。

今村候補は、亡き総理の後を継ぐべく、彼の妻もがんを抱える身でありながら、弔い合戦に参加する思いで出馬いたしました。どうか皆様の清き一票をよろしくお願いします!
すみません、今回の試合、負けてくれませんか?病院のベッドから僕のファンが試合を見てるんです。僕が勝ったら退院すると約束してくれたんです。

バンドワゴン Bandwagon Fallacy

みんながそう思うから自分もそうだと信じてしまったり、マジョリティーの立場を取ることです。

お前だけだぞ、そんなバカな意見を言ってるのは。もうちょっと空気読めよ。
みんな花束を投げた奥・・・なんという奴を攻撃しているな。今ならどれだけ攻撃してもリスクはないな、むしろ攻撃した方が俺も正義の側に回れるな。よし、俺も自分のYouTubeチャンネルで奴を批判しよう。
クールな男はみんな脱毛サロンに通っている。お前は脱毛サロンに通ってないの?だからダサいんだよ、お前は。

ハロー効果 Halo Effect

ハロー(halo)とはヘイローと発音し、後光の事です。魅力のある人間が何かをしても、他の人なら許されないこともその人なら許せるとか、説得力が違うとか、そういうことです。セルフ・ブランディングに成功した有名人はファンにハロー効果を発揮します。

鈴木さんなら、多少セクハラっぽいことされても許せるけど、田中に同じことされたら、キモいから速攻で通報する。
被験者の男女合計20名に、美人とイケメンの写真10枚とそうでない男女の写真10枚を見せて、性格の良さそうな10枚のグループと悪そうな10枚のグループに分類してもらったところ、男女とも、同姓は美しくない方を「性格がいい」グループに入れ、異性は美しい方を「性格がいい」グループに入れる傾向が見られた。
僕は、このインフルエンサー好きだな。僕にとっては彼女の言葉が世界のルール。僕は彼女にどこまでもついていきます。

まだまだいっぱいありますが、以上が一般的な誤謬です。

私がアメリカの大学でロジックの授業を受けた時、毎日の宿題が、新聞の記事から誤謬を見つけ、その箇所を蛍光ペンでハイライトして紙に貼り付け、その部分がどの誤謬になるのか、その理由を書いて提出することでした。

これをやってわかったのですが、一般に議論のプロと呼ばれるコメンテーターや政治家、評論家、不祥事をやらかした有名人に至るまで、世の中誤謬だらけだとわかります。

少なとも、自分の周りの人間、ビジネス交渉の相手とか、医者とか、弁護士とか、コンサルタントとかのお世話になる時、変な人に怪しい宗教や政治団体に勧誘されそうな時、詐欺まがいの契約を締結されそうな時も、相手に誤謬があれば必ず見抜き、指摘できるようにはなりたいものです。


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