今日は、シェークスピアの代表的な戯曲の一つ、『ハムレット』から、あまりにも有名なセリフを紹介します。
英語学習者であれば、これらのシェークスピアの有名な言葉と聖書の有名な引用文は、最低限抑えておくべきだと、私の独断と偏見で考えています。
いつもながら、上が有名な日本語対訳ですが、これが最良の役ではないと思います。
まず、この”to be”があまりにも人間の原点のような言葉であり、哲学的です。
“be”という、この同氏は、おそらく英語の動詞の中でもっとよく使われ、そのままの意味は「存在する」(“to exist”)という意味ですが、日本語の「存在する」は”be”のように自然に頻繁に使われることがないので、そもそも対訳にすることに無理があります。
「存在する」(“to exist”)という事はつまり、この世に存在する=生きる(“to live”)という意味も含みます。そしてそれは、ありのままである、という意味もあります。
そして英語では、ある異種それらは一つの概念であるから、ひとつの”be”という語に集約されています。
この有名な引用文は、劇中のハムレットによる独白の冒頭の部分です。
独白を引用すると以下のようになります。
※現在英語圏で使われている英語ではありませんので、すべてのラインを理解したり、覚えたりする必要は全くありません。
To be, or not to be, that is the question,
Whether ‘tis nobler in the mind to suffer
The slings and arrows of outrageous fortune,
Or to take arms against a sea of troubles,
And by opposing end them? To die: to sleep;
No more; and by a sleep to say we end
The heart-ache and the thousand natural shocks
That flesh is heir to, ‘tis a consummation
Devoutly to be wish’d. To die, to sleep;
To sleep: perchance to dream: ay, there’s the rub;
For in that sleep of death what dreams may come
When we have shuffled off this mortal coil,
Must give us pause: there’s the respect
That makes calamity of so long life;
For who would bear the whips and scorns of time,
The oppressor’s wrong, the proud man’s contumely,
The pangs of despised love, the law’s delay,
The insolence of office and the spurns
That patient merit of the unworthy takes,
When he himself might his quietus make
With a bare bodkin? who would fardels bear,
To grunt and sweat under a weary life,
But that the dread of something after death,
The undiscover’d country from whose bourn
No traveller returns, puzzles the will
And makes us rather bear those ills we have
Than fly to others that we know not of?
Thus conscience does make cowards of us all;
And thus the native hue of resolution
Is sicklied o’er with the pale cast of thought,
And enterprises of great pith and moment
With this regard their currents turn awry,
And lose the name of action.—Soft you now!
The fair Ophelia! Nymph, in thy orisons
Be all my sins remember’d.
心弱き母の裏切りに失望し、彼は途方にくれます。
自分は誇り高い選択をしようと心に誓い、どちらが正しいのかと自分に問いかけます。
逆境の荒波に武器を取り、最後まで戦い抜くか、あるいは永遠の眠りである死を選び、すぐにすべてを終わらせることが正しいのか。
残りの長い独白は現代の英語ではなく、古典英語、中世英語などと並ぶ近代英語(Modern English)の一種であるシェークスピリアン・イングリッシュ(Shakespearean EnglishあるいはElizabethan English)というひとつのジャンルになっているのほど奥が深く難解なので、全部を理解する必要はありません。
ただ人間であれば一度は、自分の人生の意味や、残りの自分の人生はどうあるべきか、もし今自らの命を終わらせる選択をしたら…と考えるときがあると思います。
ハムレットはここで、自分自身の命を絶つことではなく、人間そのものが存在する意義について問います。
このような苦しみの淵に立たされた時、人はどうするべきなのか。ありのまま、生きて苦しみに耐え続けるべきなのか、自らの命を絶つことで、その苦しみを自分の手で終わらせるべきなのか。どちらが人間として高貴なのか。
彼ははじめ、死の方が好ましいのではないかと考えます。
しかし、考えるうち、死んでもなお、今世の苦しみ以上の苦しみが自らの死後に待っているのではないかと思い、自殺する前に猶予を与えることにします。
この判断は高貴さからではなく、苦しみへの恐怖からです。
主人公ハムレットの名前は、シェークスピアが1601年にの戯曲『ハムレット』を書く5年前に11歳という若さで亡くなった彼の唯一の息子「ハムネット(Hamnet)」に基づくとも、この戯曲自体が1601年に他界した彼の父を元にしているとも言われています。
この恐怖と疑念、生と死、人間の狂気をテーマとしたこの戯曲はあまりに深く、私たち現代人にも、人生とは何か、という問題提起をします。
参考
Muniz, H. (2019) SAT / ACT Prep Online Guides and Tips. Available at: https://blog.prepscholar.com/to-be-or-not-to-be-soliloquy#:~:text=The%20soliloquy%20is%20essentially%20all,of%20what%20comes%20after%20death. (Accessed: 28 October 2022).