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Self Discipline – 一度やると決めたことを最後までやり抜く方法

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街に出れば至る所に誘惑の看板が出ている。

曰く、運動は大嫌いで食べるのは大好きだが痩せたい人のための漢方薬ダイエットとか、一日5分の勉強で80歳でもネイティブのように英語がペラペラになる学習方法とか、投資で確実に億万長者になれるAIツールとか。

そんなSFみたいな方法があるなら、とっくに論文が発表されて一大センセーションになっている。ネットや駅前のビルボードにこんな胡散臭い広告を出すまでもない。

結局のところ、自分をより高いレベルに持っていくのは自分の意志 willpower と、自分を律する力 self-discipline しかない。

それに、目標を達成するのには少なくとも二つの意味がある。一つは目標そのものの達成。これは当然だが、もっと大事なことはプロセスにある。このプロセスこそが人間を成長させるものであり、「自己実現欲求」を追求する人生という旅の目的に適ったもの。

だから、努力してつかんだ夢は何よりも価値があるし、つかめなかったとしても、全力で打ち込んだ後悔のない人生があるなら、目標を達成できたかどうか、という問題自体、大して重要ではなくなってくる。

自分に忖度しないで人生の目標を立てる

まず、本当に何がやりたいことは何なのか、「容赦なく」自分に問う。そして、誰に遠慮することもなく正直に答える。誰も聞いちゃいない。自分自身だけだ。恥ずかしがる必要はない。自分に全裸を晒すことを躊躇ってどうする。

次に、その理由を容赦なく追及する。それは自己実現(成長)の欲求か、あるいはそれ以外か?例えば、「困っている人を助けたい」ならば、それはなぜか。人から称賛されたいのか、それとも自分自身成長することが望みか。「お金持ちになりたい」ならば、具体的にはいくらほしいのか。そしてそのお金でどうしたいのか。パレスチナやウクライナの難民を助けたいのか、それとも人から尊敬されたいのか。それとも、「お金の向こう側」を覗いてみたいのか。

これが結構難しい。いつからか、人は自分の夢を言葉にすることに恥ずかしさを覚えるようになる。それは、どこかで誰かに嗤われる、バカにされるという思いが働くからだ。自分にさえフィルタがかかるようになる。

確かに、努力もせず、いい歳をして不合理な夢ばっかり語っているだけで何も動いていないのはカッコ悪い。でも、ここで言いたいのはもちろんそういうことじゃない。

自分の心の奥底を覗くのは、まずは自分が一番確実だ。無理ならカウンセラーやキャリア・コンサルタントの助けを借りてもいい。

その目標を小さな目標に分ける

人生の大きな夢が認識されたなら、それを小さな目標に分ける。ビジネスをやっている人なら、プロジェクトのWBS(work breakdown structure)と原理は同じだ。最終的なゴール達成に向け、細かいタスクに分けていく。ゲームで言えば、人生という冒険シナリオの中ボスを複数設定していくようなものである。

この時点で、前述のプロセスがあるから、ここで取り扱う最終ゴールや小ゴールは、「お金持ちになりたい」「英語が話せるようになりたい」「エンジニアになりたい」「やせたい」などというグレードの低いゴールではないはずだ。

ただお金持ちになりたいのではなく、何歳までにいくら稼ぎたい、そしてその理由は(最終ゴール)を達成するためにこのお金が必要だから、となる。

ただ英語が話せるようになりたいのではなく、何歳までに、ビジネスにおいて日本語と同等レベルの英語力、スティーブ・ジョブスくらいのプレゼンテーション能力をつけたい。その理由は、(最終ゴール)を達成するために世界中の人を納得される必要があり、英語でこれだけの雄弁さが必要だからだ、となる。

ただエンジニアになりたいのではなく、何歳までに…なぜなら…

という具合になっているはず。

もちろん、この時点でそんな明確なゴールを描くのは難しい。だから、若いうちはモラトリアム期間があってもいい。例えば、「なんとなくプログラミングのスキルが将来必要になりそうだから、食いっぱぐれないように今のうちにエンジニアになっておきたい」でも構わない。特にVUCA(volatile, uncertain, complex, and ambiguous = 不安定で、不確かで、複雑で、不詳な)と呼ばれる今の世の中では、それも仕方ない。

中年期を迎えた就職氷河期以前のジェネレーションは、少し状況が違う。今後もおそらくVUCAはどんどん色濃くなり、自分のキャリアに残された時間は短く、選択肢は狭くなっていくからだ。でも絶望する必要はない。40代、50代、60代~にもそれぞれのゴール設定の仕方、戦略がある。そこには必ず大きくてエキサイティングな夢もある。夢を持つのに遅すぎるということはない。

ただ問題は、これまで夢を持たなかった人間が突然変わるのには、自分を変えるのにそれなりの勇気が必要になってくる。

今のゴールにフォーカスする

この時点でタスクの目的がはっきりしている。はっきりしているということは、このタスクをやる意義も、やることの結果も、やらないことの結果も明確化している。

あとは、それに向けて発信するだけだ。

誘惑をはねのけ、低次元な人生の解釈(例えば、「やっぱり今が楽しけりゃいいや。何かあればまだ親が助けてくれるし。毎日ゲームして、たまにバイトして、お金が貯まったら推しのアイドルに会いに行って。今は後のことは考えられない」、等々)に自分を落とさず、意思を継続させる。初志貫徹、継続は力なりという諺は今でも通用する。

Where there is a will, there is a way.

-George Herbert

志あるところに道あり。

ージョージ・ハーバート(1593-1633 英国の詩人)

タスクには時間制限があることも忘れずにいたい。もう一つの諺を言うなら、時は金なり。Time is golden. その時間だけは絶対にほかのことをしないという時間を作る。

そのうち、毎日継続してやるべきことをやっていないとなんだかしっくりこなくなる。罪悪感というか、自分に嫌われそうというか、そんな気がして、やらないと気が済まなくなる。そうなればもうこっちのものだ。

感情は”使う”もの

ビジネスに従事する人なら大抵、EQ、つまり感情のIQとは、感情に振り回されないことだと習う。当然である。特にリーダー職に就く人間であれば、感情に任せて部下に怒鳴り散らしたり、危機が起こった際に冷静な判断ができないようでは問題外だ。昔は怖い上司は男らしさやカリスマの象徴のようなところがあったが、パワハラという概念ができあがった今、そんなことでは誰もついてこない。

しかし、本当は感情に振り回されないだけは不十分である。もしそうなら、感情のないサイコパスのような人間が最強ということになる。実際にそうかというと、そうでもない。そんなロボットのような冷徹人間に魅力はない。人間は感情があるから面白い。感情が人間を個性的にするし、不完全にもチャーミングにもする。

真の最強の人間とは、自分の感情も人の感情も巧みにコントロールする人間のことである。

Courage is not the absence of fear, but mastery of it.

Mark Twain

勇気とは、恐怖の欠落ではなく、その克服である。

マーク・ウェイン(1835-1910 米国の作家)

その種明かしはこれ。

Courage is not the absence of fear, but rather the assessment that something else is more important than fear.

Franklin D. Roosevelt

勇気とは、恐怖の欠落ではなく、寧ろ、その危険よりもっと重要なものがあると判断することである。

フランクリン・D・ルーズベルト(1858-1919 第26代米国大統領)

勇気、愛、好奇心、それ以外のあらゆる感情は強烈なモチベーションになる。それが下等な感情、たとえば性的興奮(性欲)であっても、リスペクトされたいという欲望であっても、あいつを見返したい、復讐したい気持ち(憎しみ)であってもよい。心理学的には、本来有害な感情を良い方向に使うことを昇華(sublimation)という。

若いころは人間が未熟であり、余裕もない。だから、承認欲求や、グループに所属したい欲求、会社をクビになりたくない欲求(安全欲求)、性欲(生理的欲求)などが最強のモチベーションの元だったりする。「自己実現」などと言われてもいまいちピンとこない。

年齢を重ねるごとに経験が増え、特に守るべき家族ができたりすると、いわゆる「承認欲求」はさほど重要ではなくなってくる。でも、人間の本質は基本的になくならない。男なら、闘争本能や怒りや嫌いな奴への殺意はある意味デフォルトの性質。それらを否定し、抑圧するのではなく、自分の成長の糧にすればいい。承認欲求は、「誰が何と言おうと自分は自分」という自信があるからこそ必要なくなる。

ただ、自分に恥じない生き方ができるか。そのためには、生涯を通じて成長を続けることが必要であり、最終的には人生のゴールは自己実現の欲求に集約される。

モチベーションはあてにしない

モチベーションはもちろん必要である。ただ、永遠に続くモチベーションなどない。

感情はいつか鎮まるからだ。

新しいモチベーションの火種は継続的に見つけ続けなくてはならない。女の子にモテるためにバンドを始めた男が、あるところから武道館でコンサートをするのが目標にかわり、しばらくしたらそこまでの知名度などどうでもよくなり、最終的には誰も作ったことのないサウンドを追求するようになった、というのはよく聞く話である。

腹の立つ上司がいて、その上司を見返すために勉強して経験を積んで、その上司以上に稼ぐビジネスマンになったが、そのころには自分が上司の立場になり、マネジメントの難しさを知り、かつての上司に理解が生まれ怒りなど消え失せるということもある。そして、そのころは新しい目標で忙しくなり、過去の怒りのことなど忘れている。

人間はそれくらい気が変わりやすい生き物だ。願わくば、その変化は成長の過程であって、ただの気移りや厳しいことからの逃避でないことが望ましい。

周りに感謝する

ここまで来たら、目標に一歩ずつ近づく自分が見え隠れしてくるはずだ。

啓発本などでは、小さな目標を達成するたびに、「自分に褒美をやれ」とよく言われる。

それは簡単なことだが、俺はあまりそれを意識しないことにしている。自分を褒めるのは、目標を達成したからではなく、日々継続して努力しているからである。そうでなければ、自分をリスペクトし、自分を好きになることが条件付きになる。従って、条件を維持するため、目標を達成するためには姑息な方法も辞さないようになる恐れがある。そうなったら意味がない。

努力している自分は素晴らしい。堂々とそのことを誇ればいい。しかし、だからと言って他者を見下したり、「自分ができることは他人もできて当たり前」などという謙虚にカモフラージュした傲慢になってはならない。自分にできないのに他人にできることはたくさんある。自分は完璧ではなく、無知であることは常に自覚している必要がある。でなければそれ以上の成長はない。

ここで述べたいのは、周りへの感謝である。毎日寝る前に、自分の人生という物語の、今日というエピソードに登場したすべての登場人物に「ありがとう」と言おう。感謝する理由はいくらでもある。感謝する気持ちこそが、幸せの正体であり、自分の外界との最も健全なつながりの形態であり、明日への新たなモチベーションとなる。

結論

人間は成長を求め、自己を研鑽することで自分をリスペクトでき、周りに感謝することで幸せを感じることができる生き物である。今をなんとなく生きる生き方も一つの生き方。だが人はその経験からも何かを学ぶものである。

人生の目標を定めることで、人は人生をささげるものを知り、そのために努力することが成長のプロセスとなる。成功も、失敗も、そこまでのプロセスも、すべて自分を成長させてくれる経験をもたらす。

その壮大な旅の途中で出会うものや出来事に感謝する気持ちを忘れてはならない。人間は弱いのですぐに傲慢になり、成長が止まる。

To your higher self!




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