大人の日本人がネイティブのように英語で考え、英語で自由に話せるようになるには、脳を生まれ変わらせるしかありません。
そんな脳内の「革命」を起こすには、「クーデター」を成功させなければなりません。
これは大きな変化です。今まで日本語をベースに脳内に構築された思考回路、常識を一度忘れて、英語のパラダイムを築くのです。
そうなったとき、もう一人の自分が誕生します。決して過去の自分が死ぬのではなく、国際人としてのもう一つの人格が誕生するというのが適切でしょうか。
「英語脳革命」ともいえます。頭の中に「英語の神の声」が届く瞬間とは、その革命が起きている事を表す兆候です。
そんな奇跡の瞬間を人工的に、最短で引き起こすには、以下の5つのステップが必要です。
- 基本装備を整える
- 生活から日本語を排除する
- インプットのチャンネル(経路)を確立する
- アウトプットのチャンネルを確立する
- 言語習得PDCAサイクルを回す
1. 旅に出るための基本装備(ボキャブラリー)を整える
脳内の革命を成功させるためには、武器と戦略が必要です。クーデター失敗に終わらない為に必要な武器、それは、以下の2つです。
- 目的(モチベーション)
- 腕力(ボキャブラリー)
です。まず目的(モチベーション)ですが、どうして英語を学びたいのか、英語を使って何をしたいのかということを明確にする事です。海外で〇〇を学びたい、国際結婚したいとか、国際ビジネスマンになって世界中を飛び回るとか、通訳になりたいとか、なんでもいいです。「英語が話せるようになりたい」という目的では、英語学習継続のためのモチベーションになりません。
爆発力プラス継続力のあるモチベーションには、「絶対にこれをやりたい、だから英語が必要なんだ!」という目的意識が必須です。これを持っている人はまずここで他の人と差をつけます。
次に腕力(ボキャブラリー)ですが、自分の脳を英語脳にするには、最低限の基本的な単語力がなくてはなりません。つまり「戦闘力」です。これは年齢に関係なく、幾つになっても努力で身に付ける事が可能です。
ではどれくらいの語彙力が必要なのか。
英語を含む多くの言語において、ネイティブの会話は、半分以上500個以内の基本的な単語の組み合わせで行われていると言います。ただ、これでは小学生くらいの子供のレベルでしかありません。
かといって、先は長く、英語には全部で100万もの単語があると言われています。それを全部知っている人はいません。とは言え、大学生を優秀な成績で卒業したいレベルなら、最低1万単語は必要ではないでしょうか。
ここで目標とするレベルはどこか。まずは英語で考え、英語で会話できるよう能力を得る為には、英語で英語を説明できる基本的な語彙力です。
つまり、ノンネイティブを対象とする英英辞典が書かれている基礎英単語と基礎イディオムとなります。
まず基礎単語の数が約2000。英英辞典の老舗、『ロングマン』で使われているコーパスに記載の単語を覚えるのが一つの目安です。英英単語を買うと小冊子の付録で付いているものもあります。英単語の説明が、全てこの2000の単語のみの組み合わせで書かれています。
僕の方でも、2000単語と中学・高校で習った単語も含め3500単語を含めたリストがこちらのページからダウンロードできるようにしました。
例えば、ノートの1ページを半分に折り、左側に単語と発音、右側に意味・定義(definition)を記載する。基本単語は複数の意味がありますので、それらの意味に共通する「概念」を記入する。そして半分を隠して、単語から意味、意味から単語を一秒で言えたものからチェックを入れて全部出来たら完了。そして忘却を防止する為、昨日覚えた単語、1週間前に覚えた単語も復習で同じことをやる。
この基礎単語、イディオムは「筋トレ」方式で鍛える必要があります。単語帳やノートを使って、自分のパワーに合わせ、毎日10〜100単語のノルマを課し、毎日意地でも覚えます。
次にイディオム。これらの基本単語を使ったイディオム(idiom, phrasal verbs)も並行して覚えます。look forとか、look into、look forward toなどの類で、こちらは800〜1000くらいあります。
単語2000とそれらを使ったイディオム1000。これは英語による脳内クーデターを成功させる為に必要な戦闘力です。3カ月から8カ月くらいを目処に、この8割か9割を身に付ける事を目指してください。
全部で2000〜3500単語と1000熟語、などと言っても、あくまで目安であって必ずしも全てマスターする必要はなく、英英辞典が理解できるようになったら次のレベルに到達したと思ってください。まずはこの「読解力」から英語脳革命のプロセスが始まります。
仮に知らない基礎単語、熟語が合計2000あったとすると、1日10語ならば半年強、1日100単語ならばわずか1カ月で完了します。
このレベルに到達したら、ひたすら獲得した武器を使いましょう。和英辞典を卒業して、実際にノンネイティブ学習者用の英英辞典を使い初めてみましょう。僕が留学生だった時代と違ってもはや辞書を買う必要もなく、ネットに出ています。オススメはロングマン、その次のレベルはCambridge English Dictionaryなどがオススメです。
それに慣れて来たら、ネイティブが使うオンライン英英辞書のdictionary.com、Oxford Learner’s Dictionaries、Webmasterなども、好みに合わせて使うと良いでしょう。
とにかく英英辞典を使う事を癖にする。和英辞典の代わりに英英辞典を使うことができたら、そんな自分を誇らしく思い、褒めてあげてください。これまで出来なかった事ができるようになるという事は、本当に素晴らし事ですから。
2. 生活から日本語を排除する
基本武装を整えたら、日常生活から日本語を排除します。
正確には、日本語を完全に使わないことは不可能です。そして、思考の基本になっている日本語を完全に捨て去る事は、精神の崩壊を招きます。そんなことを唆した僕は傷害罪に問われてしまうでしょう。
ですので、正確には、生活の中で、「この時間は日本語を一切使わない」時間を決める事です。
ただ一つ言えることは、週に一度、1時間の英語スクールの時間だけでは不十分です。日本で生活していても、少なくとも毎日1時間以上の時間を作るようにしてください。その時間は長ければ長いほど効果的です。強制的に英語を話さざるを得ない状況を作るには、日本語が全く話せない人が身近にいると最高です。日本にいる以上、いい意味でも悪い意味でも外国人は日本語を話せる場合が多いため、「強制的」に英語を話させる環境を作れば誘惑によるストレスを軽減できるのでかえって簡単だからです。
やってみると、自分から積極的に英語でコミュニケーションを取る状況を日本で作るのは難しい事だとわかるでしょう。日本人は基本的にシャイであり、相手が日本語を話せるとどうしても日本語で話してしまう。だからネイティブとの会話の機会はお金を掛けないと得られないと思っている人が多いようです。実際はそんな事はありません。無料で英語を話す機会はいくらでも作れます。また、英語を使うのに必ずしも必要だという訳でもないのです。
例えば、持っているスマホのインターフェイスの言語を英語にする。そうすれば、例えばアイフォンならAIロボットのSiriと英語で会話の練習が出来ます。AIは発音が悪いとこちらの言うことを理解してくれないので、発音を直す良いフィードバックを提供してくれます。しかも相手はロボットなので遠慮したり、忖度したり、意味のないお世辞を言い合う必要もありません。スマホの機能の名前も全て英語で覚えられる。音声機能も英語で心置きなくバンバン使えます。
次にオススメなのがKindleを使って洋書を読むことです。洋書のバラエティーも広いし、買ったらすぐに届きます。読み放題対象や実質無料のコンテンツも多数あります。また、これがお薦めする1番の理由ですが、読んでいて知らない単語があれば、ハイライトするだけで一瞬で辞書を引く事ができますし、あとで辞書を引いた履歴も辿れます。英英辞典をインストールして使えばダブルで効果があります。
他にも、グーグルで調べ物をするときはできるだけ英語でサーチしてみる、英語を使う外国人のオンライン・コミュニティーに参加する、など、生活から部分的にでも日本語を排除し、英語が脳を支配する時間を作る方法はいくらでもあります。お金は掛けなくとも十分可能です。
言うまでもなく、脳が英語を学ぶことを阻害する1番の原因は日本語です。特に日本の英語教育は、コミュニケーションツールとしての活用方法よりも、なんでも日本語、日本語的な感性に置き換え、いわば美しい翻訳をする能力を高めるをトレーニングすることに重きを置いています。そのせいもあり、多くの日本人には、英語を聞けば、聞いた音(例えば”apple”)をカタカナの音(アップル)に変換し、それを日本語の意味に変換する(りんご)癖がついています。子供が新しい言語をスポンジのように吸収するのは、大人のように日本語で考える思考回路がまだないからです。
これの癖(old habit)を壊し、”apple” を”apple”のまま、赤く丸い果実を思い浮かべられるようにならなければなりません。そのためには、一時的にでも良いので、定期的に頭から日本語を意図的に排除して、英語が支配する時間を作ってやるのです。
3. インプットのチャンネル(経路)を確立する
言語学習にはインプット(習うこと)と、アウトプット(習ったものを使うこと)で成り立っています。習った言葉が短期記憶として脳に残り、その間に使うことで長期記憶として定着するのです。
そのために、まずはインプットの経路を確立します。以下に、相手がいなくても作れる方法をいくつかリストします。
- 洋書を読む:英語の書籍、特に英語で書かれた聖書などは、英語圏の文化に大きな影響があるのでお薦めです。それ以外では、自分が興味を持てること、仕事や学校の分野のものを選ぶと良いでしょう。前述したKindleもオススメ。辞書を引く時間を短縮できます。
- ユーチューブ:海外の動画コンテンツが豊富です。ESL(English as a second language)クラス、その他の英語のコンテンツを利用するのも有効です。英語の字幕をつけたり、一時停止機能、2倍速機能を使ってリスニングを鍛える事も自由自在です。もう一つのオススメは、洋楽の好きな曲の歌詞付きの動画です。英語のタイトルに、歌詞を意味する”lyrics”という単語を着けて検索すれば、ほとんどの名曲の歌詞付き動画が見られます。僕は帰国後、ユーチューブやiTunes UでHarvardやMITなど有名大学の講義を2倍速で観て、英語でノートに要約をして書き出す事をよくやっていますが、やるとそれなりに効果があります。
- SNS:フェイスブック、ツイッター、LinkedInなどの英語のSNSを使う事は、言うまでもなく簡単でお金の掛けずに英語の情報を得る方法の一つになります。自分の興味のあるオンラインのコミュニティーに身を置く事で、楽しむ事ができるのが利点です。
- ネットフリックス、アマゾンプライム、フールーなどで映画を観る:英語の字幕付きで、わからない箇所があれば10秒戻しのボタンもあるので学習向きです。ちなみに、英語字幕はあるものと、ないものがあり、Amazon Primeには基本的にないようです。
- 英語のニュース:Google Newsのアプリを入れると、色々なニュースサイトから主要な情報を得られます。無料で観られるサイトなら、CNN、BBC、Reuters、Gardian、学術論文ならGoogle Scholar・・・サイトの種類は無限です。Google Alertsの機能も結構便利です。海外の顧客やチェックしたい企業の名前でAlertをセットし、世界中で変化があれば通知が届くようにしておくことは基本ルーチンにしています。英語版Al Jazeeraのアプリからの動画も、欧米と違った角度のニュースが観られるので興味深いです。英語のニュースがほぼ完璧に理解できるようになれば、上級者です。
- 英語の格言:以外にお薦めなのが世界中の偉人の格言(quotes)を英語で読み、英語で理解する。いい格言に出会うことで、人生を変えることすらあります。沈みがちな心を引き上げてくれます。英語でその感動を味わえたことが、英語のインプットの力を実感出来るところも大きなメリットです。
僕が元気をもらった格言はたくさんありますが、以下にいくつか例を挙げます。
“If you’re going through hell, keep going…” – Winston Churchill
“No one can make you feel inferior without your consent.” – Eleanor Roosevelt
“If you can’t feed a hundred people, then feed just one.” – Mother Teresa
これ以外、無数にあります。すべて、英語だからパワーがあります。どんな日本語訳を付けても色褪せてしまいます。
とにかく英語を好きになって、英語を楽しみ、英語で情報を吸収してください。英語はそれそのものが「学問」ではなく、あくまでコミュニケーションのツールであり、目的はこのコミュニケーションを成功する事です。
アウトプットのチャンネルを確立する
次に、自分一人でもできるアウトプットの方法をいくつかリストします。
- 英語で何か書く:日記でもエッセイでも良いから、自己満足でも、とにかく書くまくる事で、英語力がアップすると言われています。ただし、私の経験上、ある程度のレベルに達するまで、ネイティブかそれに準ずるレベルのライティングスキルのある人の添削を受けた方が良いでしょう。そんな状況になければ、とにかく文章が上手い人の文章をググって調べ、パクってください。”Fake it, until you make it.”とか、”Practice makes perfect”という英語の諺もあります。
- SNSで海外の知り合いと交流する:SNSはインプット・アウトプットの両方を手軽に行える素晴らしいツーつです。アメリカ、イギリス、オーストラリア、シンガポール、イスラエル・・・など自分の好きな国の知り合いと好きなことを語り合えます。
- シャドウイング:英語のトレーニングの一つで、プロの通訳などが使う方法です。英語の簡単な動画、例えばディズニーの動画などを見ながら、キャラクターのセリフをそのまま後を着けて話すトレーニングです。しかしこれは、話しながら聞く能力が必要なので、初心者の方には、ちょっとハードルが高いかも知れません。でも完璧にできなくても、良い英語の練習になります。
- 映画や動画:前述のように、ネットフリックスやユーチューブを使った、インプットとアウトプットの両方を実践する方法があります。字幕付きで再生字幕が表示されたら一時停止して、字幕をノートに書き取り、意味を辞書を調べて理解する。そして、それを発音する。その後一時停止を解除して本物のセリフを聞く。これを繰り返すのです。ちょっと長いプロセスですが、場面単位でやってみてください。何度見ても飽きない、好きな映画を最低2回観ると効果的です。2回目はストーリーがわかっていて、セリフを部分的に覚えていて、1回目よりはるかにたくさん理解できている事が実感できるからです。映画は、セリフを丸暗記して、俳優のモノマネできてしまうと最高です。覚えたフレーズを全部実践で使えますから。端的にいうと、ネイティブの英語をマスターするというは、語彙や発音を含め、ネイティブの模倣をする事なのです。
5. 言語習得PDCAサイクルを回す
基本装備が整いました。日本語を排除する時間を生活に確保しました。そしてインプットとアウトプットの経路を確保しました。あとは、「PDCAサイクル」を回すだけです。
「PDCAサイクル」とは、Plan-Do-Check-Actの略で、ビジネスや研究、工業などの各部門において、改善を進めるための基本です。
まず「計画」をし、「実行」に移し、定期的に結果を「チェック」して原因分析を行い、改善のために何かを変えて「行動」してみる。そして新たな「計画」のフェーズに進む。この繰り返しです。
英語学習に置き換えてみると、まず、基本装備を整え、日本語排除のポリシー、インプットとアウトプットの経路を決める事がこの「計画」に当たります。
次にこの「計画」通りに「実行」します。
次に、「実行」がうまくいかなかったかどうかを毎日反省し、フィードバックを集目てみます。これが「チェック」に当たります。ここで言うフィードバックとは、アウトプットをした時の相手の反応、今の計画は実行継続可能か、効果はあるかという自己評価、問題があればその原因の分析結果などです。
そして、「チェック」で得られた結果から、改善あるいは問題解決のための方法について、「こうしたらいいのではないか」という仮説を立て、何かを変える事を決めます。これが「行動」です。
これを日々繰り返して行きましょう。それが最短で脳内革命を起こすメカニズムです。
これに様々な方法(記憶法、催眠法、倍速法、などのアプリ)を試し、自分に合った方法を試してみる事です。僕の意見を言えば、方法はそれほど重要ではありません。結局は自分に合った方法、これがベストです。自分が心地よく、効率的に継続できるインプット、アウトプットを続け、改善を続けていく事です。
もっと言えば、こう伝えたい時は、こう言ってみよう。今日は上手くいった。今日はいかなかったが実際はこういう言い方があるらしいから、次回使ってみよう。と試行錯誤をしながら英語力を改善するのもPDCAそのものです。
このプロセスは、まさに機械学習と全く同じです。ただ、違うのは(そして人間がAIに任せず自分で英語を学ぶ意義があるのは)、人間には感情がある事です。コミュニケーションとは、本来は感情を伝達し、感情を共有する事である筈です。AIはまだ人間のように感動することはできないし、それが実現するするのはまだまだ先かもしれません。
余談でしたが、異国の人と感情を共有できた時、英語の”神の声”が聞こえた時の感動は人間にしか味わえません。上記のプロセスを続ければ、その時は必ずやって来ます。
- 基本装備を整える。「筋トレ」で「語彙」という腕力を鍛える
- 生活から日本語を排除する。英語に脳を一度乗っ取らせ、その後共存する
- インプットのチャンネル(経路)を確立する。ネットを利用すれば無料で無数のオプションがある
- アウトプットのチャンネルを確立する。必ずしも人間の相手はいらない。自分自身やSiriでも相手になる
- 言語習得PDCAサイクルを回す。そして「神の声」を待つ