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日本語はマシンガン、英語は押し寄せる波のように

言語は基本的に人間、それも複数の人間が長い歳月をかけて習慣の中から形成されたものなので、コンピューター言語のように全て論理的に説明が付くわけではありません。

特に英語はアングロサクソン民族の共通言語と、周辺民族の言語が融合して出来たため、規則に例外が多く含まれています。言語学習者泣かせですが、そこが言語が生きている証であり、魅力でもあるといえます。

したがって、僕たちが普段話している日本語と英語では、発音の考え方が根本的に違います。

その違いは色々ありますが、発音の根幹を形成するコンセプトは以下のように違います。

  • 日本語はマシンガン、英語は押し寄せる波のよう
  • 日本語にはイントネーションがあり、英語にはアクセントがある

この二つを理解すれば英語の発音を自分のものにする事ができます。

なぜ日本語との違いを強調するのかというと、日本語を客観視し、自分の無意識の言葉の癖や固定概念を分解する事が、英語のマスターには必須だからです。

日本語はマシンガン、英語は押し寄せる波のよう

日本語は、音の単位、(英語の音節またはsyllablesというが、日本語のそれは拍またはmorasという)がほぼ一定のテンポで、マシンガンのように発音されます。たとえば「こんにちは」を発音したときのようにリズムが一定です。

これに対し、英語は押し寄せる波のように、強く発音する音節はゆっくり、それ以外は速く発音されるため、リズムが一定ではありません。

音楽で言うと、演歌とR&B、あるいはカントリーミュージック、あるいはラップ、あるいはロックくらいの違い。詩(poetry)で言うと、松尾芭蕉とシェークスピアくらい違います。

つまり、ジャンルそのものが違うのだと思ってください。

ジャンルが違うのだから、考え方もまるで異なります。

日本語を英語のリズムで発音するとこんな感じになります。

「わしゃきょううう こっかああいぎじどううう にいきまーーした(私は今日国会議事堂に行きました)。」

めちゃくちゃ不自然ですよね。

英語には機能語(function words)内容語(content words)という概念があります。

機能語とは、特定の機能を持つ語であり、前置詞、接続詞、代名詞、強調されない接続司、例えばin, out, on, off, before, to, for, about, because, I, she, he, it, them, they, their, theirsなが含まれます。

内容語とは、文字通り、情報のコンテンツを形成する要の部分で、名詞、動詞、形容詞、副詞、例えば、Japan, English, Microsoft, Brad Pitt, run, beautiful, beautifullyなどがこれに該当します。

英語では機能語を速く弱く発音し(前後の単語とくっついたり、ひどい時は発音すらしない音があります)、内容語を強く長く発音します。

但し、動詞は動詞でも、be動詞だけは例外で、特段be動詞の部分を強調したい場合以外、機能語として発音されます。

be動詞を強調したい例は例えばこんな時です。下のボブ(Bob)とジェニファー(Jennifer)の会話文(conversation)を読んでください。黒が強調されない語、赤い部分が強調される語、その中でも特に強調される語を太字イタリック体にしてあります。

Bob: Come on, Jen! Don’t be so cold. You’re my girlfriend, right?

Jennifer: Well, I was, until yesterday.

まず、ボブのセリフで、最初の”Come on”は”come”だけでなく”on”も強調されます。というより寧ろ”on”の方が強く発音されるのですが、これは、”on”が”come on”というイディオム(ちょっと待てよ、くらいの意味で、こっちへ来いという意味ではない)の一部として使われており、前置詞ではなく副詞だからです。

同じくボブのセリフの”Don’t”は助動詞で機能語でも強調されます。やって欲しくない強いメッセージを伝えるためです。

また、ジェニファーのセリフの中では、”was”が一番強調されます。なぜだかわかりますよね。

ちなみにコントラクション(contractions)と呼ばれる短縮形、”don’t,” “you’re”は、ご存知の通り、それぞれ”do not”と“you are”の機能語が早く発音されるため周辺の単語とくっついてできた常用短縮系です。また、強調されない1単語内でも短縮系は発生し、”until”は省略した形で”till”と発音されることもあり、同スペルの派生単語としても存在します。

ポイントは、英語のセンテンスには必ず強調される語とされない語があり、強調される語の中でも特に強調されるチャンピオン単語があるということ。

必要な時間やエネルギーを消費しない、合理性を重んじる欧米人。かたや、単語の重要性に関わらず、全ての拍において一つ一つ丁寧に発音する中に、深い意義が隠れている、奥ゆかしさを尊重する日本人。文化や国民性の差が、言語にも興味深く現れているのではないでしょうか。

日本語にはイントネーションがあり、英語にはアクセントがある

日本語にはいくつかイントネーションがありますね。有名なのは「橋」と「端」など、イントネーションによって違う単語になります。

英語ではアクセント(accent)という概念が存在します。ここでいうアクセントとは、訛りのことではなく、強弱の事です。

それぞれの英単語の中には、強されるべき音節があります。機能語のような、通常は適当(失礼!)に発音される単語にも、例外的にスポットライトが当たる時のために、しっかり強く発音される箇所が決まってい流のです。

例えば、以下のような単語感じです。/より右の発音記号の中の、アクセント(ˈ)の次の赤字音節が強調箇所です。

  • appleæpəl/ 名詞・内容語
  • Barack Obama /UK:ˈræk  əʊˈbɑːmə, /US: oʊ-/ 名詞・内容語
  • about /əˈbaʊt/ 前置詞・機能語
  • because /UK: bɪˈkɒz, bɪˈkəz (速く発音される場合) / US: bɪˈkɒːz, bɪˈkəz/ 接続後・機能語
    (”because”が速く発音される場合は “b’cause” /b-ˈkɒz, “‘cause” /kɒz, “cuz“/kəz などと発音されたり、スペルされたりすることもある)
  • independent /ˌɪndəˈpendənt◂/ 形容詞・内容語

したがって、Barack Obama(ˈræk oʊˈbɑːmə)をBarack Obama (bæˈræk ˈbɑːmə)と発音するのは誤りです。

ちなみに、Barack Obamaは、僕があえてカタカナで表記するなら、「バラク オバマ」ではなく、「ベァレァーック アウバーモ」です(この表記能力は、ネイティブを含め、誰より優れている自信があります)。

日本語らしくない英語を話すには、なるべくこの英語の特性を強調し、少し違和感があるくらい、強調すると事を強くゆっくり発音し、そうでないところを軽く速く発音する癖をつけましょう。リスニングでも、そう思ってネイティブの英語を聞いていてください。それだけでリスニング力がアップするはずです。

単語を覚える際は、発音とアクセントの位置まで覚える事が必要です。最初は二度手間だと思うかも知れませんが、慣れてくるとだんだんパターンがわかって来ます。一度慣れてしまえば、スペルから発音を推測するのは、新しい感じを見たときにその読み方を推測し、覚えるのと同じです。

こういった説明は、文字にすると複雑に見えます。しかし実際に一度理解して慣れてしまえば、非常にシンプルです。ちょうど歩くのと同じです。健常者で歩く事を難しいと思う人はいませんが、歩き方を文字で説明したものを読む人には複雑に関します。

  • 英語と日本語では演歌とロックくらいリズムが違う
  • センテンスには強調する箇所(peaks)と強調しない箇所(valleys)があり、最強のチャンピオン単語がある
  • 強調する言葉は、強調する箇所を強くゆっくり発音するとネイティブのように聞こえる