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何歳になっても可能な英語習得に必要なものとは?

僕が、自分の経験に基づいているとはいえ、英語くらい誰でも、何歳になっても習得は可能だと信じています。では、その具体的な根拠と方法は何でしょうか。

まず、一つ言えることは、週に一度、1時間〜2時間くらい英語教室に5年や10年通っても、お金と時間ばかりかかってあまり効果はないと言うことです。

必要絶対量

なぜそんなことを言うのかというと、僕自身英語学校は渡米前に散々やったからです。そしてほとんど効果がありませんでした。そしてその後文献を読んで研究して、それを裏付ける理由がわかりました。結論を言うと、スクールの授業だけでは根本的に、英語のインプットとアウトプットの絶対量が足りないからです。

言語には「臨界期説」という学説が存在します。それによると、人間は、誕生してから幼年期を経過し、年少期に入る9歳くらいまでの間に、著しい速度で言語情報を吸収し、この時期を過ぎるのを境に、脳みそがゆっくりと閉じていきます。良く聞かれる説では、特に母国語に存在する音声をこの時期までに脳が覚え、それ以降に新しい音を認識するのは困難だと言われています。10歳以降に英語を学び始めた日本人がRの音とLの音、Vの音とBの音を認識しにくいのはこのためだという訳です。

しかし、僕が読んだ書籍によると、実際にはもっと早くから脳は閉じ始めているということがわかっているそうです。言語学者のバトラー後藤さんによると、人間は誕生直後はすべての言語の音を聞き分ける能力が備わっているそうです。そして、6ヶ月くらいまでの間に、親がどんな言葉で話しかけたかによって、母語とそうでない言葉を区別し、母語以外の言葉を聞き分けることができなくなります。このように最初から持っていた能力を失うのは、あえて自分の母語を選択してそれ以外の言語をシャットアウトすることにより、取得する情報を特化して効率よく学習を行うためだと考えられています。

つまりこれは、人間が文明を形成して習得した社会的生物なりの知恵であるといえます。

脳細胞の役割分担を決める際、ある言語が脳内を支配するようになるのです。

日本人の場合はその支配言語が日本語となる訳ですが、以後、日本語の語彙、音声を中心に脳内に情報が入り込み、情報同士がシナプスで繋がって、情報が情報を連鎖させるシステムを築き上げます。これをワイアリング(wiring)と言います。

英語脳”クーデター”から”革命”そして”共存”へ

英語を習得するためには、この日本語が支配する脳内に英語を侵入させ、最終的には日本語同等の支配権を持たせるようにする必要がある訳です。これを僕は、「英語脳クーデター」、「英語脳革命」と呼んでいます。

政治テロのような強い言葉をあえて使っているので、お察しの通り、人間はこういった概念に対し、意識的にも無意識的にも抵抗感を示します。当然ながら、長年日本語でワイアリングされた脳は、英語による侵入を外敵と判断し、拒絶反応を示すでしょう。

それに対抗するのは理性と目的意識であり、休息や遊び心、充実感、報酬を巧みに使い、上手く共有していくのです。目指すのは、脳内での日本語と英語の共存であり、日本語の殲滅ではありません。ただ、英語の侵入を許す手段として、短期間日本語を排除するという荒療治が有効なのです。

さて、ここからは諸説に分かれるところですが、脳細胞に許容できる情報量を有限と考えるか無限と考えるか、により言語学習の期待値が大きく変わってきます。「有限派」の最たる学説の一つが、いわゆる言語脳はバルーン、つまり風船のようなものであるという立場です。

それによると、脳の容量は幼少期までに決まっています。日本語でいっぱいになった脳に英語を入れ込むには、少し日本語の空気を抜く必要がああります。「何かを得れば何かを失う」、つまり合計能力は変わらないので、英語と日本語の能力を同じにしたければ、臨界期までに両言語を必死で学習して風船を大きくしておくか、あるいは日本語を半分忘れて50%ずつにするしかないとする説です。

少し前までかなり有力な説だったらしいですが、僕は、これは間違っていると思います。僕は25歳で英語の勉強を始めるまでは日本語オンリーの完全なるモノリンガルでしたが、英語を話せるようになった今も、日本語を忘れたとは思っていません。

ただし、程度はどうあれ、英語をしばらく話した後は日本語が出てこない、日本語の後は英語が出てこない、ということはあります。これはなぜかというと、脳が一時的に、その時の「支配的言語」で情報をつなぐようになるからです。

つまり英語で情報を受診した脳は、英語の情報を蓄えた脳細胞にアクセスし、英語で情報を返そうとします。これにより英語による情報網が活動的になります。これがいわゆる、「英語脳にスイッチが入った」状態です。

モノリンガルの時の僕の脳は、「日本語脳モード」ですべてをコントロールしようとしていたので、このスイッチングをする必要がありませんでした。ただし、それ以外の言語(例えば英語)が脳に入り込もうとすると、日本語に支配された脳細胞=思考回路は、この「侵入者」阻害しようとしました。

つまり、既存の日本語の音や文字で認識しようとしたり(カタカナとして認識したり)、英語を話そうと思っても、英語より先に日本語が出てきてしまい、言葉に詰まってしまったりする訳です。 特に日本人は、シャイで恥をかくことを極端に恐れる民族なので、このような状態が起こると非常に不快になります。

従って、臨界期を終え、脳細胞を日本語に支配されている日本人が英語を習得するには、一時的に日本語をシャットアウトして英語情報を脳細胞に定着させ、英語情報同士を繋ぐ連絡回路を作ってやることが必要となるのです。

ところが、英語に触れるのはたったの週1回、1時間、それ以外は日本語を話し、英語の授業を受けている時さえも、日本語で考える。そしてそれ以外の時間はこれまでの人生と同じように、慣れ親しんだ日本語漬けの生活する。そんな状態で、果たして英語は一度でも脳の支配権を獲得することができるでしょうか。

考えるまでもなく、答えばNOです。少なくとも僕には無理でした。

ではどれくらいの時間、日本語をシャットアウトして、英語だけで物事を考え、コミュニケーションを行う時間が必要か。それは個々の意識の問題ですが、例えば自分を基準にした場合、おそらく1000時間くらいの濃密な英語支配の時間を作れば、少なくとも革命は始まると思います。

1日1時間ならば3年間毎日続ける必要がありますが、1日の起きている時間の半分を英語に支配させることができれば、半年でそのレベルに到達できます。当然、このレベルではまだまだネイティブとは比べ物になりませんが、一応英語を使ってコミュニケーションする喜びを覚え始めるフェーズには入っているかと思います。

この段階までくれば英語を習得するのがますます楽しくなり、加速度的に上達するはずです。

日本で生活しながらこのレベルに到達するためには、まずは上記のようなことを強く認識し、 英語脳を作る5つのステップで説明した計画に従い、自分の日常を英語の海で満たすしていきます。

2017年 ロンドンに昔ながらの電話ボックスが残っていた

例えば、英語のラジオを聴く、英語のYouTube動画を見る、図書館で洋書を借りて読む、毎週末最低1本は洋画を観る、一日最低15分は英語で独り言をいうのを習慣にする、英語でブログや日記を書く、など。

今はインターネットがあるので、ソースは無料で手に入ります。お金を払って毎週英語教材を送ってくるサービスに加入しなくても、自分の好きな映画を穴があくほど見て、セリフを丸暗記してもいいのです。お金は一切必要ありません。

要は、自分がどれだけ目的意識を持って、情熱を燃やし続け、self-discipline(自分に課すこと)を継続し続けるかです。このメカニズムは、誰でも同じです。だから、もし語学に才能があるとすれば、情熱を燃やし続けれらる能力こそが、最大の才能だと思います。

情熱のある人は、感受性が強く、感激しやすい性格であるとも言えます。喜怒哀楽を強く感じる人は、その感動をずっと覚えています。だから、映画で見た、とても感動したセリフ、怒りを覚えたセリフ、面白かったセリフなどはよく覚えているのです。失敗して恥をかいたときもそうです。ですので、人間らしく何かを好きだったり、 情熱を燃やしたり、怒ったり、幸せを感じるパワーを持てることを大事にするべきです。それが、目標実現の原動力となります。

そして、英語を学ぶためには、必ず「英語が話せるようになること」ではなく、その先にある「英語を使って何何をしたい」という具体的なものをゴールが必須です。

英語はあくまで手段であり、目的にはなりません。英語を習得することそのものを目的にしてしまうと、人間は怠惰な生き物なので、いつしか英語を勉強しようとする過程そのものが目的に変わってしまい、毎週英会話教室に足を運ぶことで安心するようになってしまいます。

英語学習そのものが趣味、という状態で終わりたくない人は、必ず、「国際結婚する」でも、「ハリウッドスターになる」でも、「TEDで素晴らしいプレゼンをして世界中の人に影響を与える」でも、「世界で活躍するアスリートになる」でも、「外交官になる」でもなんでもいいので、とにかく英語を覚えたその先の目標が必要です。そして必ず実現すると自分に約束してください。その実現のために必要なことは、とりあえず英語の習得です。夢実現の努力をしているうちに、気づいたら英語力は備わっています。このことはNLP(neuro-linguistic programming=神経言語プログラミング)という学問でmeta-goal settingと呼ばれている手法であり、有効性が証明されています。

僕もまだ夢の途中です。幾つになっても、大きくても小さくてもいいから夢を持ちましょう。夢を実現した自分の姿を思い描いてください。流暢に英語を話しながら夢に見た「何か」を成し遂げている自分を思い描いてください。できるだけ具体的に。いつ、どこで、周りに誰がいて、どんな服を着ていて、何歳で、どんな気持ちか。それを想像してみましょう。

2017年午前二時に到着したウクライナ・キエフのホテルの廊下にて
  • 9歳の「臨界期」を超えても英語は習得可能。人間の脳は「風船」ではなく、無限に近い可能性がある
  • 英語を流暢に話し、夢を叶える自分を明確に想像できる能力が、語学の才能