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ボキャブラリーをスポンジのように吸収し、記憶する方法

英単語を覚え、語彙を強化するのが、語学の効果をあげる最強法方法です。文法がなくても単語力があれば会話は成立しますが、文法があっても単語力がなければ話になりません。

ただ、語彙を記憶するのがどれだけ大変なことか。

僕も英語の授業が大嫌いで、点数も最低だった一人です。留学する準備で英語の勉強をしたときも、機械的な暗記作業は大変でした。

でも、苦労したからこそ、その効果を自信を持って保証できます。

これだけは僕の経験から出した結論です。『ロングマン』の英英辞典が読めるくらいの単語力は、英語学習で唯一に機械的にでも覚えるしかありませんでした。

『英語脳』を作るために最低限必要な最小単位、強固な城塞を建築する作業でいうと基礎に積み上げる石一個一個のようなもので、これだけはどうしても必要なものです。

全部覚える必要はないので、まずは80%以上の単語のスペルから発音、日本語から英語、英語から日本語へ、2秒に以内にスムーズに変換できるようになるのが第一ステップです。

例えば、僕がこのサイトに載せている3500単語の『ソクラティック・コーパス』を使うのであれば、苦手な単語2割(700程度)はとりあえず後回しにして構いません。 英語学習で一番辛いのは最初のこの段階です。でも、それさえもしっかりした目的意識とモチベーションがあればやっていけます。そして、次のレベルに進んだ後はきっと、英語学習が楽しくイージーになるでしょう。

ただ、語彙に関しては、中学高校と英語の勉強をしっかりやってきた人は、その「貯金」だけで半分以上クリアできるのではないでしょうか。 過去の勉強だけで足りない語彙に関しても、英単語にも漢字熟語のように規則性があるので、ある程度単語を知ると、スペルを見れば発音や意味がかなり正確に推測できるようになります。

僕自身、記憶力はあまり良くないために、コツを掴むまではこの暗記作業に普通の人の倍くらい時間と労力をかけたと思います。 今は漢字を覚えるより楽に英単語を覚える事が出来るようになりました。最初からスポンジのように記憶できたらどんなに良かったか。 要は目的意識と、どれだけ語彙の「筋トレ」に喜びを感じられるか、の2点に尽きますが、もちろん、科学的に少ない負担で効率よく単語を頭に定着させる方法はあります。

機械は覚えろと命令された事を覚える。人間は感情で覚える

英単語に限らず、人間はどのような場合に物事をよく覚えているか、というと、(1)対象に興味がある場合、(2)強烈な感情の揺さぶりがあった場合、(3)繰り返しその単語に触れた場合、(4)マルチチャンネルで覚える、の4つです。

例えば、自分の好きな人の顔や名前はよく覚えています。逆に、あまり興味のない人のことはあまり覚えていません。 あるいは、自分の生活や人生に深く関わりがあるものに関しては、人間はよく覚えているものです。これは、脳が無意識に、与えられた情報を短期記憶から長期記憶に保存するかどうかの取捨選択を行なっているからです。

英語を覚えて、使っていくことの喜びを知ることが大切なのはそういう事です。長く続けるには、とにかく好きになること、そして楽しむこと。そして、それでも辛くなったら、強い目的意識を持ち続け、英語をこれから覚えていく事が今後の自分の人生を大きく変えることを強く認識する。それができるかどうかが、言語習得の可否を決定すると言っても過言ではない、と僕が言うのはその理由からです。

同様に、強烈な感情の揺さぶりがあった場合、例えば憧れの人に胸をドキドキさせながら教えてもらった単語はよく覚えていますし、洋画のセリフが理解でき、それが胸に響いて感動の涙を流した場合など、その単語を覚える際に喜怒哀楽・恐怖・悔しさ・幸福感など強い感情を抱いた場合もよく覚えています。

昔好きだった懐かしい音楽を聴くと、当時の思い出が、楽しかったことも辛かったことも含め鮮明に蘇ってくるのもこれと似ています。これは脳が、ある記憶をその時の感情とセットで覚えているためです。

繰り返しの重要性は言うまでもないでしょう。ただ、繰り返しは時間を消費するので、上記の(1)か(2)が伴っていなければ、何度も必要な繰り返しの回数も増えてしまいます。つまり、効率化のアップには繋がりません。

最後のマルティメディアというのは、とにかく読んで視覚で覚えるだけではなく書いて触覚で覚える、聞いて聴覚で覚える、というように、身体中の五感を総動員させて覚える事です。その方が学習効率が上がる事が証明されています。

ネイティブ気取りで学術的に覚える

また、正攻法のもう一つの方法、これはネイティブも意識して、あるいは無意識に行なっている事ですが、単語のパーツの意味を知るという方法があります。

例えば私たち日本人や中国人が知らない漢字を見た時、その部首から意味を推測したり、忘れてしまった時のクルーとして使用しているのと同じです(木偏は木、人偏は人に関する意味の漢字だ、など)。

英語にはprefix(接頭辞=プリフィックス)suffix(接尾辞=サフィックス)というものがあります。

例えば、pre-というprefixには「先」「前」という意味があり、pre-またpri-から始まる単語にはそれらの概念に関係した意味があります(例:prefix, present(先に送られた=プレゼント), prerequisite (前提条件), pretend(先に行いがち=振りをする), priority(優先権), prepare(準備する)など)。

この方法はネイティブが使うだけあって非常にパワフルな方法ですが、この道を突き詰めると、インド=ヨーロッパ語族に属し、ロマンス語派・ゲルマン語派とはじめとする諸言語を源流とする英語の語源を理解に繋がってきます。

その世界観は、時として古代中国の哲学を源流とする漢字のそれと異なる場合があります。

従ってこの方法をある程度自分のものにするには、柔軟な発想の切り替えと、これまでの世界観を変える覚悟が必要ですが、この部分も言語を勉強する上での楽しさの一つです。

英語のルーツを理解する事が、英語圏の生活様式の背景にある壮大な歴史や文化とつながりを持っていくことになるのです。

したがって、それらすべての方法を組み合わせたものが、単語を最も効率的に吸収できる方法です。

結局は、自分の好きな方法=最良の方法

まとめると、効率的に語彙を広げるには、まず、自分の好きな教材を選ぶ。

例えば、自分が英語に興味を持つきっかけになった歌でもいい。本でもいい。大好きな映画の一場面でもいい。

一番好きな歌詞やセリフを丸暗記するぐらいの気持ちで、何回も何回も観て、聴いて、読んで、単語ひとつひとつの意味を調べ、その言葉に込められた細かな感情までしっかり理解する。

歌い手、演者、あるいは作者になりきる。感情移入をする。 次に単語は、まず自分が覚えやすそうな単語から覚えていく。今ならもっと素早くルックアップができるツールを使う。

和英ならアルクの英辞郎Weblio翻訳、英語による定義ならロングマン英英辞書ケンブリッジ英英辞典、アメリカ英語寄りの英語ならメリアム・ウェブスター英英辞典、類語辞典にはコリンズ類語辞典など。データの多さで言うと、DictionaryもThesaurusも一体になった系列のDictionary.comThesaurus.com。もっと手軽に調べるならグーグル翻訳でもいいですが、こちらはある程度のレベルに達してから使うことをお勧めします(2020年の時点では、まだ翻訳の正確性に欠けるのと、具体的な説明がないため)。

ノートに5回続けて書きながら5回続けて発音し、発音を覚え、自分の声を聞いて聴覚で覚え、手の感覚、視覚で覚える。

単語の意味を覚えたら、例文を読んでコロケーション(ネイティブがよく使う別の単語の組み合わせ)を覚え、発音をしっかりと理解する。

ここで言う「意味を覚える」とは、対訳となる日本語を機械的に暗記するのではなく、単語に与えられた複数の定義(definitions)から、「共通概念」や「イメージ」を理解する(最後はこの意味が理解できないかと思いますが、勉強していくうちにわかるようになると思います。説明が悪く理解できない場合は筆者までご連絡ください)。

【忘却対策】頭が悪いと忘れるのではなく、扱う情報量が多いと印象に残らなかった情報を忘却する

ただし、ただ覚えるだけでは、人間は覚えてしまいます。その理由は、せっかく覚えても使わないからです。アウトプットの機会を設け、覚えたらすぐに使う。learning in contextという方法ですが、この方法の方が、ただ単にんに機械的に暗記しただけに比べて遥かに記憶に残ることが、学術的にも証明されています。

だから、よくある方法は、自分でその単語を用いて例文を作って、それを声に出して言ってみる事です。ふざふざけた内容でも何でもいいから、印象に残る例文ほど良いです。

さらに、人間が忘れやすいと言われている24時間後、72時間後に復習を行い、覚えた単語の記憶を磐石なものにする。暗記チェックには、単語帳ではすぐに足りなくなるので、ノートを半分に折って左半分に単語名、右半分に意味や発音記号を記入し、半分ずつ隠してテストするのがお薦めです。

それと、英単語はcontext(文脈)から覚えていく事が重要なので、単語の機械的な暗記というのはお勧めしません。

本来、新しい語彙は、ネイティブやエキスパートとのコミュニケーションや、本や映画や音楽といったメディアなどの中で発見され、言葉としての本来の意義を持つシチュエーションでのみ習得されていくものです。

ただ、『ソクラティック・コーパス』に関しては、やむを得ないので今回限り推奨しています。

上の原則に沿った反復学習を行えば、単語は効率よく最速で覚えていけます。

そして、前述のように、ある程度語彙が増えると、スペルから発音を推測したり、prefix, suffixを見ればスペルから意味が理解できるようになっていきます。 こうなればしめたもので、語彙が増えていくのがどんどん面白くなっていきます。ぜひお試しください。

結局のところ、英語学習には、この方法が絶対、というものは存在しません。自分が楽しく続けられ、上記の4つの条件を満たしていること、自然に「英語による脳のクーデター」を成功させるためのPDCAを繰り返せる方法がその人に一番適した方法です。お金など掛ける必要は無いし(これだけお金を使ったんだからやらなきゃ!というのが励みになるなら掛けてもいいですが)、自分の好きな方法で十分部可能です。

  • 語学において「筋トレ」は基盤を築く石であり、必須
  • 人間は所詮感情で覚える
  • 英単語の語源や構成を調べることは、英文化を知ること
  • 自分が好きな学習方法が、自分に合った学習方法
  • 扱う情報量が多ければ忘れるのは当たり前。感情と脳の仕組みを利用せよ