「グローバル」人材を追い求める日本人
ここ数年、電車の中や駅のあちこちに貼られているポスターを見ると、英会話教室やグローナル人材の育成を売りにしている大学が様々なキャッチフレーズを使って売り込みをしています。 僕が留学する頃には、大学の方から生徒を募集するなど、ありえませんでした。
「グローバル人材」の不在が、日本経済が世界のトップから転落した原因の一つである事は、日本人の共通認識の一つのようです。一方で、「グローバル人材」の定義ほど曖昧に使われている言葉も珍しいでしょう。
グローバルに出る為の、パスポートとも言える「英語」スキル、それも、日本語と同等にコミュニケーションのツールとして使えるレベルのスキルを身につけている日本人は、海外と比べても多くはいません。
英語教育が導入されて久しいのに、どうしてでしょうか。
高校まで英語大嫌いだった僕がほとんど独学で使えるようになった体験を踏まえての持論でもありますが、そもそも英語、というかツールとしての外国語は、大学で高い学費を払って4年間もかけて学ぶようなものではありません。英語文学とか、言語学としての英語を学ぶのなら別ですが。
英語はあくまでのツールであり、英語習得のプロセスはトレーニングであって、エジュケーションではないからです。
はっきり言って、4年間の大学の勉強の成果が、アメリカ人と日常会話ができるようになっただけというのでは、正直言って悲し過ぎます。 それに気づいて僕は日本の大学の外国語学部を飛び出し、英語を自力で学びながら英語を使って何か別のものを学ぶ為に留学を決めました。
僕が留学を決めた頃と違い、今はもう、無料で英語を学ぶ機会はいくらでもあります。羨ましい限りです。特に、インターネットの普及は、ツールとしての英語の使い道を数100倍にしました。
世界中のありとあらゆる情報が英語に翻訳され、ネットでアクセスする事が出来るのに対し、日本語では日本の情報しか手に入らず、日本語に訳されている情報量はごくわずか。日本語に翻訳されるまでのラグというハンディキャップもあります。
ネイティブ vs ノン・ネイティブ先生
また、日本人によくありがちな勘違いとして、「英語はネイティブから学んだ方が良い」「ネイティブと英語を話すには、お金を払わなくてはならない」というのがあります。
英語を自分のものにするには、自分はイギリス英語かアメリカ英語か、お手本を決め、ネイティブの真似をすることも必須でしょう。
ただ、それと同等に、ノンネイティブから英語を学ぶこともまた必須であり、実力のあるノンネイティブの先生から学ぶだけでも、ネイティブにかなり近いレベルの英語力に達することが可能です(要は、少なくともその先生と同じレベルに到達することは可能です)。
そもそも、ネイティブの定義とは何か?おそらく英語圏で生まれ育ち、英語を母国語にする人の事だと思いますが、ネイティブの先生は全ての面においてノン・ネイティブを凌駕しているのでしょうか。
答えは、私の経験では、どちらとも言えません。
ネイティブはネイティブの、ノンネイティブにはノンネイティブの良さがあるからです。
今世界で一番話されている、「世界共通語」の地位を唯一確立しているのは英語に他なりませんが、英語を話す人の過半数が、ノンネイティブです。
つまり、英語の中でも人気のあるBritish EnglishやAmerican Englishを話すのはほんの少数派で、実は、アジア人の話す第2言語以下の英語が、「世界最大」の言語なのです。
世界共通言語はBroken Englishだというジョークもあるほどです。
ビジネスなどの国際交流の中で、TOEICやTOEFLのリスニングテストで聞くような、ようなわかりやすい綺麗な英語を話してくれる人はほとんどいません。
アメリカ人でさえ、実際はもっと早く、TOIEICや英語の授業の教科書に出てこないスラングやイディオム、専門用語を交えて話します。
グローバルに活躍する人材になるには、British EnglishやAmerican Englishだけではなく、Indian English、Thai Enlglish、Chinese EnglishやChinglish、Singlish(中国人や華僑系シンガポール人がよく話す、中国訛りの強い発音と英語と中国語がミックスされた語彙で構成されたピジン英語(pidgin English)を半ば揶揄した呼称)などを理解できなければ、ビジネスを制す事は難しいでしょう。
次に、なぜ日本人が、ネイティブと話すのにお金が必要だと考えるのでしょうか。
日本人は非常にシャイで、英語がうまくないのに外国人に英語で話しかけるのは気がひけるのです。
しかし、1時間2000円〜5000円、プライベートレッスンなら一万円ものお金を払って、英語を日本人に教えるために雇われている、「先生」と呼ばれるネイティブに話すのであれば、その気負いが消えるからではないでしょうか。
日本男児はハンデを乗り越えてこそ、そこに栄光がある
余談ですが、女性の方が外国人男性と仲良くなってどんどん英語が上達するのは、女性の方が脳の構造が言語に向いている、というのもありますが、一般的に男が女に話しかけエスコートする側、女は受け身だが選ぶ側、という考え方が世界共通であるので、女性の方が自信を持って外国人に話しかけられるし、また何もしなくても男性の方から話しかけてくれる確率が高いのです。
それにひきかえ日本人の男は(僻みか?)、一般論として西洋人女性から見たら、背は低い、筋肉はない、顔は中性的で女みたいでセクシーさがない、という肉体的ハンデに加え、シャイで奥手、女性の自尊心を刺激し、立てることをしないので、外国の女性にはモテない(日本に来ている外国人の女性は日本文化及び日本人に興味がある人が多いので例外)。
そして西洋の男性は基本的に東洋人の男に興味はないので、日本の男性が受け身の状態でネイティブとコミュニケーションを取れる確率は女性に比べ著しく低いです。
しかし、だからと言って、お金を払ってまでネイティブに「話してもらう」必要はありません。 確かに、西洋人の中には、お金を払ってでも英語を教えてもらう価値のある先生はいます。が、その対価はあくまでも英語教育という専門的スキルに対して払われるべきであり、英語を話すことそれ自体は、お金を払う価値のあるようなものではありません。
英語を習得するためには、一時的にせよ意図的に日本語を忘れ、英語だけで思考し、コミュニケーションをする時間が必要だと繰り返し言っています。
このコミュニケーションというのはもちろん、interactive、つまり相互的なものですが、いわゆる受信(input)と送信(output)の割合は、実は9:1くらいでいいと思います。
どうしてもinputとoutputの割合を5:5したくなりますが、特に初心者の頃は、脳に英語を定着させる為に、大半がinputつまり「聞く」あるいは「聴く」「読む」「見る」あるいは「観る」の受信作業なのは当たり前です。
そしてoutputに関しては、とにかくモノマネ、これに尽きます。
できればまず、ハリウッドスターあるいは小説家、作家、ビジネスマンなど、この人のように英語を話したい、スピーチをしたい、この人のような英文を書きたいというロールモデル(role model)を決めることをお勧めします。
そして後は、その人の英語の口調や発音を真似して、表情まで完全にコピーする。
文章も一字一句そのまま自分の文章のように書いてみる。
“Fake it till you make it.”という諺があるように、英語の達人になるまでは、ロール・モデルの真似をする。
Fake it until you make it.
このロール・モデルlは、実際に会ったことのない人でも、生きていない人でも構いません。
例えば、スティーブ・ジョブズやリチャード・ブランソンのような実業家でもいいし、ハリウッド・スターでもいい。ミュージシャンでも小説家でもいい。
彼らの映像や作品さえ残っていればそれで真似ができます。
もちろん、もっと身近にいて尊敬できる、知り合いのオーストラリア人でも構いません。
こんな英語を喋っている(書いている)自分を思い浮かべてください。
こういう人を先生にしてどんどん勝手に”パクる”形で学習していけば、それ自体に授業料は一切必要ありません。
では、この90%のインプットは具体的にどうすれば質と量を上げられるか。
もちろん英語の教科書を買ってもいいですが、そういうのははっきり言ってコストがかかるし、つまらないので長続きしにくいです。
あの悪名高い”This is a pen.”は問題外として、「Mika DavisやKaren Jonesがどうした」とか、何の感情移入もできないロボットのような人間が登場し、はっきり言って学習者の人生とは全く無関係な意味のない英文を読み、 その構文を小難しい日本語で解説されても、頭に残りませんし、まして実際のシチュエーションでそれが生きることはほとんどありません。
代案として、私のオススメの21世紀の学習方法をいくつか紹介します。
英語を使った大人の遊びは「加点法」で。一単語理解できたら丸儲け
まずは、洋楽の歌詞を勉強する。
好きな歌の歌詞の意味を調べ、歌い手の微妙な心情を理解した上で、歌詞を暗記する。メロディーに乗せてならは、歌詞は自然と覚えやすくなるし、カラオケのレパートリーが増え、趣味で音楽を聴くことがすなわち英語力の上昇に役立つようになります。
ポップなどの歌詞は口語調のものが多いので会話でも大抵そのまま応用でき、詩的要素も加わって、ちょっとおしゃれな言い回しも覚えることができます。
最近は本当に便利になりました。
Youtubeなどは、洋楽は大抵歌詞付きの動画で観ることができます。
好きなところで一時停止して詞を書きとめ、一字一句調べることができます。初心者には、口跡がハッキリしていて歌詞もストレートなアーティストがオススメです。
どんな方法で英語で「遊ぶ」にしても、で大切なのは、絶対に文法や和訳での意味を100%理解しようとしないこと!
日本人、特に日本人男性が陥る間違いは、文法や和訳をパズルのようにパーフェクトに解明しようとしてしまい、1つでも置き場所がわからないピースがあると、先に進めなくなってしまうことです。
これでは意味がありません。
日本人は、日本語で歌や詞を楽しむとき、いちいち日本語文法を意識しません。
それよりも、韻や言葉の響きの美しさとか、単語ひとつひとつに込められた「魂」を理解しようとするはずです。
英語も同じです。英語の受験勉強のように100%の文法的解釈、和訳を求めるよりも、作詞者はどんな気持ちでこの詞を書いたか。数あるフレーズのうちの1つからでも、何かのインスピレーションを感じ取ることができたら、それは成功と言えます。
もともとそれが、コミュニケーション・ツールとしての英語を使う真の目的なのですから。
今回は英語の歌詞から学ぶ方法にかなりスペースを割きましたが、それ以外では、楽しそうな英語字幕付の洋画を見つけ、穴があくほど何度も観てセリフの意味を覚え、何度もモノマネをして覚える、という方法も有効です(特に映画が好きなら)。
どうせなら、好きな映画のワンシーンを一人芝居できるくらいになるといいでしょう。
セリフを丸暗記することで、そのフレーズをそのまま使えるし、応用をきかせて主語や目的語をちょっと変えれば、色々な状況に対応できるようになります。
読み物は、ウェブサイトのarticleや、Twitter、Facebook、英語の論文、ブログなどネタは豊富にあります。
自分の興味のあるものを選べば、良質な楽しめる教材が無料でいくらでも手に入ります。
当然、Shakespeareなどの有名な著者の作品なども無料で見られます。
いかがでしょうか。こういうinputの仕方なら、少しは英語が楽しくなると思いませんか。
アウトプットを探すのも簡単、話す機会がない、は言い訳
後は、outputを行った時にフィードバックをしてくれる相手が必要ですが、それこそネイティブやノン・ネイティブなどの、英語を話す相手を探す必要があります。
これは何も英語教室や語学留学にサインアップしなくても、単純に海外から来た知り合いを作ればいいのです。
相手も日本に興味があって来ているのですから、たいていの場合、日本人の友達が欲しいと思っているに違いありません。
また自分の使ってる言葉に興味を持ってくれる人に、好感を持たないはずがないのです。
困っている人がいたら、積極的に話しかけましょう(とは言っても常識の範囲内で、ですが)。
それ以外では、自分前にも話した、自分のスマホのインターフェイス言語を英語に変え、AIと会話したりする方法もあります。
SNSも、海外の知り合いを作るいいツールです。
万一友達になろうとして近づいて行って冷たくあしらわれたり、怒られたら、一応、自分が失礼な事をしていないか考え、自分に落ち度がないと思えば、気にせず他を当たりましょう。
このように、日常生活の中で英語を使う機会はいくらでもあります。
自分で探せばすぐそこにあるものであり、誰かに与えてもらうものでも、お金で買うものでもありません。
だから、お金がない、スクールに通う時間がない、というのは多くの場合、ただの言い訳なのです。
- 日本人は「グローバル人材」という言葉をよく口にするが、「グローバル」という言葉ほど曖昧に使われている言葉も少ない
- インターネットは英語のインプットとアウトプットの機会を飛躍的に広げた
- ロール・モデルを見つけ、その人を徹底的に真似よう
- 英語学習は加点法。1単語理解できただけで丸儲け
- 英語を使う機会は、誰かから与えられるものでも、お金を出して買うものでもない