※まだ見ていない人には、若干ネタバレになる可能性があります。
昔前に、『スーツ』というアメリカのドラマ・シリーズが流行りましたよね。
アマゾン・プライムやネットフリックスでこのシリーズを今でも見ることができます。
しかもネットフリックスは英語字幕機能がついており、それも100パーセントとは言わないまでも結構精度が高いので、映画やドラマが好きな方は英語学習にはもってこいです。
特に、ノン・ネイティブの日本人がビジネス英語を学びたい場合は、結構役立つ単語や表現が出てきます。
『スーツ』はドラマなので、いわゆる”business as usual”、ただのスーツを着た弁護士がよくある仕事を片付けるだけのストーリーラインだったら、つまらなさすぎて誰も100話以上のエピソードを見てくれないでしょう。
そのため、このドラマは文字通り破天荒なキャラクターが数多く登場し、実際のビジネスの場では相応しくない表現も多々登場しますが、そこは私たち常識のある日本人ならさすがに分別できます。
今日はその中から、シーズン3、エピソード13『因縁の対決』を見ながら、僕が独断と偏見で、ノンネイティブが使えそうだと思ったビジネス的表現について、ノンネイティブ人工バイリンガルの目線で書いていきたいと思います。
ネイティブの先生はあまり見ていないような、日本人ならではのタッチで解説していきます。
まずは、このエピソードのあらすじですが、以下の通りです。
主人公の弁護士(senior partner)ハーヴィーは、彼が過去に3度敗訴しているライバル、エリオットに直面する機会を得る。一方ダナ・スコットは、ハーヴィーの同僚ルイスの案件を侵害する(Netflixの紹介文に若干の修正)。
では、ここから英語表現のノンネイティブ解説します。
I can find a job somewhere else.
私は他で仕事を探せます。
上司との口論の末、もうこの仕事を辞めます、と言う場合や、内定(offer)を断る場合に使えます。駆け引きの中のブラフとして使える場合と、そこで決裂となる場合とがあるので、それは状況を見て使う必要があります。
Harvey: I want to work with you. Come to Pearson Spector.
Scottie: If all you want to do is work with me, I can find a job somewhere else.
Harvey: Scottie, that’s not all I want.
Scottie; Then say it.
Harvey: I want you in my life.
法律事務所(law firm)のトップの1人となったハーヴィーは、同じく弁護士の女性スコッティに自分の事務所で働いて欲しいと頼みますが、愛の告白を期待するスコッティは、「私と仕事がしたいだけなら、別に私は別のファームでもいいでしょう」と素っ気なく返します。そこでハーヴィーが男をみせ、告白します。
I wouldn’t if it weren’t for you.
あなたのためでなければ、こんなことしません。
おっさんが女性に使うと使い方によってはセクハラになりますが、冗談ぽい状況で言えばリップサービスになります。
これが通用するかどうかは普段の行いと相手との関係によります。
英語は日本語以上に、何というか(what you have to say)、だけでなくどのような場面で、どんなニュアンスで言うか(how you say it)で相手にどのように受け取られるかが変わります(アメリカ人の友人の証言と自己体験に基づく)。
僕がこの表現をお勧めしたいのは、営業トークです。あなたは特別なお客様ですという事を示すために、ちょっと大袈裟に言う場合です。
Our management would never approve a 10-percent discount, but I managed to convince my boss–I wouldn’t if it weren’t for you.
Something money can’t buy.
お金では買えないもの。
英語では、「お金が買わないもの」と表現します。日本語のように、「お金では買えないもの」Something you can’t buy with money.でも通じるようですが、最初の表現の方が日本語っぽくないので英語エキスパートに聞こえます。
We take our opportunities where they present themselves.
私たちは言いたい事を言うチャンスががあれば遠慮なく言うし、やりたいことをやるチャンスがあれば、遠慮なくする。
私たちはそういうざっくばらんな関係でしょう。何を今更?というような皮肉っぽい表現です。
Mike: You’re just giving me shxx.
Donna: We take opportunities where they present themselves.
ここでは、マイクはドナに自分がしているネクタイをこき下ろされ、があんた口悪いな、と非難しているのに対し、ドナはすかさず、私たちはお互いにチャンスがあれば言いたい事を言うでしょう、と、暗に本当の事を言って何が悪いと返しています。
こういう皮肉めいたsarcasticな世界は『スーツ』の世界観の一部であり、ややアメリカ文化を誇張しているように見えます。
日本人からすると、時折イラッときますが、こういうサーカズムは、英米では結構出てくるジョークのパターンですので、いちいち腹を立てていると英語圏でのビジネスは難しくなります。
There is no gift for Harvey.
ハーヴィーを喜ばせるギフトはない。ハーヴィーを喜ばせることはできない。
マイクがドナに、ハーヴィーを喜ばせるには何をあげたらいいか相談したら、ドナがこれを言います。
He is extremely difficult to please.という意味で、プレゼントをあげることだけではなく、喜ばせることは不可能だと言う比喩的表現としても使えます。
Donna: There is no gift for Harvey. He gets what he wants, and he doesn’t want what he doesn’t get. And my knowing that is the only gift is the only gift he’ll ever need from me.
ハーヴィーは欲しいものは何でも自分で手に入れるし、手に入らないものを欲しがる男じゃない。そして、私が彼はそういう男だと知っている事が、彼にとっての私からの唯一のギフトなのよ。
要は、俺は人に何かを求めるような男じゃない、それだけ覚えておいてくれればいい、だから邪魔をしてくれるな、という意味ですね。なんてヤローだ。
ドナは呆れたように言っていますが、ハーヴィーのそういうところも含めて尊敬していると思います。
It’ll make the perfect gift.
それが、僕が求めていた最高のギフトになるね。
ハーヴィーにあげる最高のギフトのネタを見つけたマイクは言います。これが、
It`ll make a perfect gift.
の場合、それは、もってこいのギフトになるね。
になります。ニュアンスがちょっと違います。definiteive article(定冠詞)である”the”の場合は、ただ一つしかないものを探り当てた感じです。indefinitive article(不定冠詞)の”a”だと、要求を完璧(perfect)に満たすギフトの一つに過ぎません。
Mike: Whatever that is, it’ll make the perfect gift.
Thank you for bringing me in, and I assure you, I will be hitting the ground running.
私を採用してくださってありがとうございます。即戦力となるべく全力で精進することをお約束します。
スコッティの就任の挨拶の一言です。bring someone inで、呼び込む、採用する、仲間に入れる、招聘する、というような意味であり、I assure you (that)はここではI promise約束する、コミットする、保証する、というような意味になります。弁護士なので、簡単にI guranteeとは言いません。
Scottie: I’d like to thank you all for bringing me in. And I assure you, I will be hitting the ground running.
Jessica: Well, that’s what we like to hear.
このドラマのキャラクターは基本sarcasticなので、どこまで本気かはわかりませんが、一応ジェシカの反応では、スコッティの言葉自体は模範的なようです。
スコッティはかなり自信たっぷりのようにも見えますので、それを言葉じゃなくてアクションで見せてもらうわ、という意味も込められてのhalf sarcasmかも知れません。
言葉よりもアクションで評価するのはプラグマティック(pragmatic)なアメリカのビジネスの基本です。
そうこうしているうちに長くなってしまいました。まだ最初の3分しか見ていないのに。
この続きはまた次回にします。すみません。
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References
“Moot Point” (2014) Suits, season 3, episode 13. Directed by Kevin Bray. Written by Aaron Korsh and Daniel Arkin, March 20.