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『スーツ』の英語表現② – 時間を守らないビジネスパーソンは動物以下だと抗議するには

※まだ見ていない人には、若干ネタバレになる可能性があります。

昨日はドラマの冒頭の3分の間にあった使えそうな表現だけで終わりましたので、その続きを書きます。

引き続き、ノン・ネイティブの目線で、日本人の観点での考察もくわえてみました。

このシリーズを最初から読む場合。

Without punctuality we are animals, right?

「時間を守らなければ私たちは動物と変わらない」・・・ですよね?

ミーティングに遅れた間に顧客をスコッティに横取りされたルイスが憤慨して、やむ得ない事情で遅れたのに勝手に決めるのは不当だ、と抗議したのに対し、スコッティはシニア・パートナーにおける規程を引用し、このセリフで最後を閉めます。こんな会社規程があったらこわい。

でも、会議の遅刻は大罪です。

たださえ、人件費を食います。10人が参加する会議を1時間やったら、参加者の報酬額にもよりますが、最低でも会社にかかるコストは10万円くらいすると考えて良いでしょう。昔のように一般社員に無償残業をさせられる時代は終わりましたので、給料は完全なる「固定費」ではありません。

いや、優秀な社員の時間は会社に利益をもたらすため、その機会を奪ったことになりますので、機会損失を考えたら、その損害はもっと大きなものになります。

それなのに、10人いて1時間だったら、ひとりせいぜい6分くらいしか発言できない。いや、現実は一人か二人がほとんど寡占的に喋っていて、同じアイディアがグルグル回っており、あんまり発言しない参加者もいる。

大抵の場合は、全員参加する必要さえなく、後で決定事項を共有すればいい話なのに。日本人はどうもバブルの頃の習慣なのか、みんな仲良しこよしのミーティングが好きなようです。

ひどいのになると、会議したのに何も決まらない、誰も責任を取らない、会議後に議事録も付けない、フォローアップもない。ただ会議をすることが目的のような会議。確実に生産性を破壊していますよね。

ただでさえ少なくしたい会議なのに、会議の開始を遅らせ、参加者全員の時間を奪う行為は、会社に対して多大な損害を与えたことになります。言ってみれば、最低でも机を一つ、あるいはPCを一台壊したくらいの損害でしょうか。

遅刻常習犯には言ってやりましょう。Even an animal wouldn’t break a computer. 動物でもPCまでは壊さないと。

They’re still your client, but this is Scottie’s transaction.

彼らがあなたの顧客であることに変わりないけど、この案件はスコッティに任せます。

ここでいうtransactionとはもちろん、トランザクションの事ですが、法律事務所におけるトランザクションとは、ビルつまり請求ベースの仕事のことであり、この仕事、案件、プロジェクトという比喩的な意味と解釈できます。

仕事を奪われて抗議するルイスに、代表のジェシカが諭すときのセリフです。

Jessica, I want to know where I fall in the pecking order.

ジェシカ、俺はこの群れのヒエラルキーのどの位置にいるのか知りたいんだ。

ここでいうpecking order、群れのヒエラルキーとは、会社の上下関係で、特に会社の公式なヒエラルキーというより、アンオフィシャルな力関係の事を言っていると思われます。

会社には大抵、多かれ少なかれ社内政治的なところがあり、組織の”秩序”があります。こういう言葉を使う場面、私は過去にありました。

I didn’t screw you over. Your bylaws did. And if the shoe were on the other foot, and you’d taken the case from her, you’d be sleeping like a baby.

あなたをこんな目に遭わせたのは、私じゃなくて、規程よ。それにもし逆の立場だったら、あなたは喜んでスコッティの仕事を奪って、今頃子供のように眠っているはずよ。

ミーティングの遅刻と、それに関する規程がルイスを担当から外してしまいました。if the shoe were on the other footは、逆の立場だったら、の意味で、shoeはsituationを形容する比喩的表現によく使われます。例えば、I’m in your shoes (あなたと同じ立場にいる)とか。

大事なのは、単数なのに、wereという複数過去形のBE動詞(the plural past tense of “be”)を使っている事です。これは、実際は起こっていないことを「もしこうだったら」とタラレバ話するときに使う仮定法過去(hypothetical past)でしたっけ?文法上の用語はあまり重要じゃないですが。ネイティブにもここで普通にwasを使ったりする人もいるので、別に間違えても恥ずかしくないです。日本人がこれを正しく使えたら、大したもんだと思っておけばいいと思います。

このwould be sleeping like a babyは、子供みたいに喜んでスヤスヤ眠っているはず、という意味ですが、何の罪悪感もなく、子供のように喜んでいる、という比喩です。もちろん、夜は子供のように無邪気にぐっすり眠っていることでしょう。

Did it ever occur to you that…?

・・・って考えたことある?

occur to youは、アイディアが頭を過ぎることで、Did it ever occur to you that…? は、Have you ever thought that…?に似ています。が、言い方によっては少し上から目線に聞こえるかも知れません。

Jessica: Did it ever occur to you that these situations may sometimes be a result of your own doing?

Luis: What on god’s green earth are you talking about?

ジェシカの「今起っている事はあなた自身の言動の結果だと考えたことある?」という言葉に対して、ルイスは怒りを露にして「一体全体何をおっしゃっているのかわかりません」という意味の言葉を発していますが、このwhat の後に続く「神様の緑色した地球の上において」なる言葉は、WTF (What the fxxk)シリーズのバリエーションなので(他にfor xxx’s sakeとかもありましたっけ)、WTFほどではないにせよ、ドラマでなければ上司にはあんまり使わないと思います。いや、実際はLAには仕事で似たような言葉を使っている人、結構いたなあ。日本人が真似する必要はないと思いますが。

In the past, you’ve generally chosen the enemy route.

これまであなたはこういう場合、基本的に敵を作る道を選んできた。

会社には必ず敵がいて、味方がいます。僕の経験上、出世する人には大抵両方います。

Pick your enemies carefully, or you will be doomed.

したがって正しい敵と味方を選ぶことは非常に大切な要素です。

僕の場合、基本的には自分の理念に合わない人とは関わらないようにしますが、わざわさ敵を作って得をしたことは一度もありません。ベンチャー会社のナンバー2的な存在から、失脚したこともあります。

Jessica: You have an opportunity to bond with our newest senior partner or make a permanent enemy of her. And I’m saying, in the past, you have chosen the enemy past.

Luis: Can you give me a specific?

この文脈でのbond withは誰かと忠誠を誓い合う、親密な仲間になる、という意味です。新しいシニア・パートナーであるスコッティと良好な関係を築いておくことは、ルイスにとって有益であるはずなのに、彼はどういう訳か、敵になる道を選びます。routeはルートともラウトとも発音しますので日本人は注意が必要です。

make an enemy of someoneは、そのまま「誰かを敵に回す」ですね。permanent enemyは、直訳すると「永遠の敵」、意訳して「不倶戴天の敵」とでもしましょうか。

ルイスの台詞の中のa specificは、an exapleの意味です。a specific example、つまりあなたの話は具体性に欠けると、ルイスの抗議的なニュアンスが少し見て取れます。

というわけで、今日はここまでにしましょう。今日は7分まで行きました。

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References

“Moot Point” (2014) Suits, season 3, episode 13. Directed by Kevin Bray. Written by Aaron Korsh and Daniel Arkin, March 20.

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